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2012年2月10日 (金)

『狙撃手』14話~15話 感想

感想


 今回は前回までの「戦場の悲惨」さから変わって、再びエンタメモードに。まあ例えばガンダムで言えば序盤の騒動が一騒動し、主人公がさまざまな敵や困難に遭遇しつつ仲間と絆を深めていく、いわゆる二クール目に相当すると思えばいいか。

 とりあえず各人物に見せ場があります。




文軒のショック


 今回、長年、段旅を苦しめてきたスパイが張脆だとついに判明する。(ただし彼の他にもまだ段旅内部にはスパイがいることが示唆されている)

 誰よりも漢奸を憎む文軒は、他ならぬ自分の部下がスパイであったことが相当ショックなようだ。普段は気強く振舞っているが、蘇雲暁と二人の時に思わず心情を吐露してしまう。

文軒「こんなことってあるか。私が重慶から連れてきた部下の中で、張脆は最後の一人だった。私はこの目で、彼が党と国に忠誠を誓う宣誓をしたのも見たんだ。彼の家族にも日本軍に殺された者がいる。なのになんだって裏切って漢奸になったんだ! 私には本当にわからない」

 う~む、張脆のことをおべっか使いの部下その1くらいにしか思ってないように見えていたけど、実は文軒なりに張脆を部下として大切にしていたんだなぁ。特に自分と同じく「家族を日本軍に殺されている」という過去があるから、よけい信頼していたのかもしれない。

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 「最後の一人だった」という言葉から、文軒は今まで軍統の過酷な任務の中で多くの部下を失ってきたのだろう。そして最後の一人である張脆も、日本軍へ駆け込むのを防ぐため文軒が撃ち殺してしまった・・・・・・




大春と胡子叔


 欠点も多いが、(時々狭くなるけど)度量も大きく人間的にタフで、二勇たちの兄貴分な大春だが、今回はちょっと人に甘える弱さもかいま見せた。

 九児と竜紹鉄がくっつくのではないかと気が気ではない大春はその悩みを胡子叔に打ち明ける。最初は「馬鹿なことを言うな」と相手にしないが、大春が本気で悩んでいるのを見て励ましてやる(私から見ると、この励ましはちょっと的がはずれているように思えるが)


 で、重要なのはここでの二人が、まるで親子のよう、少なくとも大春の方は胡子叔のことを親のように思っていることが伺えることだ。また胡子叔は時々大春を「春児」と子どもを呼ぶように呼び、3話では大春に

「おまえは確かに今は隊長さまかもしれないが、俺の中じゃいつまでもちっこいガキだよ」

と言っている。二人は大春が幼い頃からの知り合いで、孤児であった大春にとって親代わりだったのだと思う(今後の話で大春の過去と胡子叔との関係はよりはっきり語られる)。

 しかし、だとすると気になる胡子叔のセリフがある。

「このガキ! おまえに戦い方と銃の撃ち方を教えたのは俺だぞ」

 胡子叔が、そのような兵士としての教育を大春に施したのはいつなのか? それはまだ大春が幼い時ではないか?(私はいくつかのセリフから大春の年を計算してみたが、確実に十代前半で兵士になったと思われる)

 つまり頑是無い年の孤児を兵士にするために教育した、とも解釈できる。

 胡子叔は粗野な人間ですぐに怒鳴り散らす人間に描かれている。おそらく幼い大春が泣こうが嫌がろうが、厳しく兵士としてしつけたのだと思う。

 客観的に見ればずいぶんひどいことのように思えるが、胡子叔からすれば大春のために最善を尽くしただけだろう。今後の展開で明らかになるが、大春には幼くして兵士になる以外に生きる道はなかった。ならば胡子叔としては、あえて大春を兵士にし、しかも生き残れるように教育することこそ彼のためだと信じていたに違いない。どんな境遇であれ、生きていることは何にも勝ることだと。

「甥よ、叔父の言うことを信じなさい」

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 大春を励ます胡子叔

 胡子叔は偏屈な性格ですぐに大春のことを怒鳴りつける一方で、親のような愛情を抱いているのは明らかだ。だからふだんは弱音を吐かない大春も、胡子叔になら人に言えない悩みを打ち明け、ちょっと甘えたくもなる。中国語において血縁関係にない自分と相手を、家族関係を表す言葉で表現するのは、相手に家族に準じる情を抱いていることの表れである。




苦痛を分かち合う


 竜紹鉄と九児の仲に嫉妬する大春。だが、竜が毎夜、戦争の悪夢に苛まれていることを知ると、そんな嫉妬もどこかに行ってしまい、彼を心配するようになる・・・・・・このへん、大春、すごく強くていい人だ。マジで惚れるくらい素敵。

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悪夢にうなされる竜を起こす


 悪夢に苛まれていることを大春に知られ、一人、別の場所で眠れぬ夜をすごす竜紹鉄。早朝、大春はそんな彼を探しあてる。来るのに時間がかかったのは、いったいどうすれば竜をこの苦しみから救うことができるか、考えていたからだろう。

 しかし、彼の苦しみが戦争ゆえだとしたら、いったいどんな言葉であれば、彼を慰められただろう、彼を救えたであろう。そしていかなる言葉でも彼を救い得ないことは、大春もよくわかっていたであろう。

 だから少しためらいながらもその傍によりそうように座った大春は、静かにこう切り出す。


 「俺もいつも悪夢に苛まれている」のだと。


 それから彼はとつとつと自分の体験を語りだす。

 連長になったばかりの時、人数も装備もこちらよりずっと優勢な日本軍部隊との戦いを行った。自分は部下たちに命じた。「死ぬまで戦え」と。その結果、自分の連隊はほとんどすべて戦死した。最小の戦士はまだ15歳であった。それから半月の間、まともに眠ることができなかった。

 大春は半分泣き出しそうになりながら、続ける。

 かつて「小さな鏡がついた銃」に目がくらんだばかりに、日本軍の武器を盗みに行って仲間を二人死なせてしまったこと。あの後は、目を閉じると死んだ二人が出てきてこう尋ねてくるという。「連長、あの銃は手に入った?」と。

 これは・・・・・・特に後者はかなりキツイ。


 大春は、なぜ突然このような、話すのもつらいことを竜紹鉄に語りだしたのだろう?

 おそらくそれは、自分が竜紹鉄の苦しみを理解していることを伝えるためだ。彼を苛むのと同じ苦しみに自分もまた苛まれているのだから。そして、竜は闇の中にいるが、決して一人でそこにいるわけではないとわかってもらうためだ。

 はっきり言えば、私はこのような方法(自分の経験を語り、自分と相手が同じだと見なそうとする)が有効だとは思えない。

 だが、大切なのは、大春がこの方法を通じて何をしようとしているか、だ。

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 竜紹鉄の苦しみを救うことは誰にもできない。

 だからその痛みに寄り添う。そして、それに気づいてもらわねばならない。己が一人ではないことを知ってもらうために。そして、その痛みを消すことはできないが、分かち合うことが可能だと理解してもらうために。

 大春は、まさしく竜の重荷を分かち合うために、自分が傷つくことも厭わず過去を語ったのだと思う。そしてそれこそ、話の内容自体よりもその行為自体が「苦痛を分かち合う」ために必要なことであった。

 その己が傷つくことも厭わず手を差し伸べる無償の行為にこそ、竜は多少救われたのではないかと思う。


 そして大春は続けて言う。「この痛みは、時間とともに慣れてくるものだ」と。

 これはかつて段旅長が言った「時間がすべてを解決する。経験をつめば強くなれる」というのと同じではないだろうか? そして竜はその時「強くなるですか? それは冷酷になることでは?」と言って、その考えを受け入れることを拒んだ。

 なのにここでまた大春から同じような言葉が出てくることに、違和感を覚えた。結局、このドラマは「強くなれば戦争の痛みを感じなくなる」というところに落ち着いてしまうだろうか? もしここで竜紹鉄が一度は拒んだその考えを受け入れるのだったら、それはなんかいろいろと後退してしまっていると思うが。


 とりあえず、現段階では竜はまだ結論を出していない。(そもそも結論を出すこと自体が一種の後退だと思うが) 

 そして大春は、なぜ自分たちは強くならなければならないか、段旅長が言わなかったその続きを語った。

 かつて大春の部隊に学生が参軍しに来た。しかしその学生は戦場の残酷さに耐えることが出来ず、ある日、銃で自殺してしまった。

大春「おまえは彼と同じようになってはいけない。死ぬのには確かに勇気がいる、だけど生き抜くのはさらに勇気のいることだ」

 大春は竜紹鉄に死んでほしくなかった。だからこの傷に耐えるほどに強くなれ、と言いたかった。そうなのだと思う。




竜紹鉄と九児


 さて、再び一緒に任務をすることになった竜紹鉄と九児は微妙な関係に。

 ・・・・・・もうこのへん、見ていて心臓がかゆくなるような、赤面せずにはいられないような二人だ。このこっ恥ずかしい展開は、もう少し何とかならなかったのか、と脚本家に言いたい。・・・・・・監督のせいか脚本家のせいか知らないが、どうしてこのドラマの男女関係の描写はこうも見るに耐えないレベルなのだろう(男同士の関係はあんなに萌え・・・・・・いやうまいのに)。


 とりあえず九児との会話で竜紹鉄が国民党員ではないことが判明。自由であるためにどこの党派にも属したくないのだという。前回、大春も竜が絶対に共産党に来ないことを悟り、その意志を尊重して八路軍への勧誘をやめた。

 しかし、竜はどう見たって国民党に忠誠を誓っているわけでも反共なわけでもないのに何故頑なに共産党を拒んでいるのか? その答えは彼が従うのは自由と個人主義そして自身の基準、そのための代価として孤独であってもかまわないというスタンスだからのようだ。・・・・・・う~ん、こういうノンポリが実は一番手ごわいかな? 




芥川の哲学


 段旅のスパイから、竜紹鉄たちは「前山口」という地点で中将を狙撃するという情報をつかんだ芥川。しかし、それでも中将には予定通りその地点を通過してもらい、竜らを返り討ちにする作戦を立てる芥川。

 芥川としては、中将が前線に視察に来ることを向こうが知って狙撃する決意でいる以上、中将の行動を秘密にすることでどこで狙ってくるかわからない状態にしているよりも、公開して襲撃地点の予測を立てておくほうが合理的に思えたのだろう。

 しかし、中将の命をおとりに使う作戦に大野は激怒。だが、芥川はこう反論。

芥川「中将が前線に来ることを選択した以上、大日本帝国の軍の威厳を振るうことを選んだ以上、危険は伴うんですよ。これは、彼の天皇に対しての職責です」

 いやぁ、戦場に来る以上、覚悟はできているんだろ。しかもこれは彼の職責でもある。なのでおとりにもなってもらう。

 芥川の論理は(とても賛成する気になれないけど)すさまじい。しかもこの「中将」は皇族出身なのだが、そんな相手の身分にも彼の哲学は惑わされることもないらしい。これが「芥川」という人間なのだなぁ~と印象深い。




ピックアップ場面


 大春は字の読み書きができない二勇に代わって、彼の母宛の手紙を代筆しているらしい。しかし大春もそうスラスラ字が書けるわけではなく、傍らの字典を見ながら二勇の言う言葉を書いているのだが、二勇はどんどん喋る上に、難しい漢字まで使い・・・・・・

二勇「母ちゃん、腰はよくなった?」

大春「(書きながら)『腰はよくなった?』」

二勇「体を冷やしちゃだめだよ」

大春「『体をひ』・・・・・・『体を冷やしちゃだめだよ』」

二勇「あんまりケチケチしないで」

大春「『あんまりケチケチ』・・・・・・ええっと『ケチケチしない』・・・・・・」

二勇「ちゃんとしたものを食べてください」

大春「・・・・・・『ケチケチしないで』」(←漢字が分からないので字典をめくる)

二勇「俺は給料をもらえたので」(←かまわず先を続ける)

大春「(字典を見て)『ケチケチ』・・・ええっと、おい、おまえもっと簡単な漢字の言葉で話せよ!」

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字典を引きながら手紙を代筆

 なんか微笑ましい。・・・難しい漢字(「攒」とか・・・)が必要な言葉で喋るな! って言われてもそもそも二勇は漢字を知らないので、何が難しいかそうでないかもわかりません(笑)


 それでも大春は続けて手紙を書いてやるが、二勇がためた給料の使い道について指導が入った。

二勇「まず牛を買って」

大春「『まず牛を買って』」

二勇「それから家を買って」

大春「『それから』・・・・・・おい、二勇。牛を買うより先に家を買ったほうがいいんじゃないか?

二勇「先に牛だよ。だって牛がいれば畑を耕せるし、作物育てて、それで食い物買って生活できるだろ」

大春「・・・・・・いいや、家のほうが重要だ。家がなかったら人も牛もどこにいればいいだよ。二勇、兄貴の言うとおりにしろ。貯金で先に家を買え」

二勇「ううん、じゃあ、先に家! 家買ってそのあと牛を買う」

大春「おうっ、先に家だ、家」


 いやいやもう兄貴風を吹かせちゃって、実に微笑ましい(笑)

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