2015年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ

ランキング

« 『我的兄弟叫順溜』と『戦闘的青春』ゲット | トップページ | 雪だあああーーー »

2011年11月26日 (土)

紅色経典メディアミックスの系譜

 どうも、分類・データ整理が無意味に大好きな水木です。


 前回のエントリーの『戦闘的青春』を紹介する中で<
紅色経典>という言葉を出したけど、この機会にちょっとこのブログとも縁の深い(笑)<紅色経典>について触れてみたいと思います。

 と言ってもあんまり深く掘り下げるには時間も資料も現在少ないので今回はあくまで<紅色経典>と呼ばれているものにはどんな作品があり、それはどのように中国メディアで展開されているか、あんまり詳しい解説は抜きで羅列してみようと思います・・・・・・そんなことやってなんになるのか、DBってのは作るのが目的じゃなくて何らかの分析に使うために作るんだろ、とか自己ツッコミもしたいですが・・・・・・まあ、いつかなんかの役に立つかもしんないし、中国のメディアを分析すんのに役立つかもしんないし・・・・・・と無理やり理由づけをしてみますが、まあ、結局はこういうの作るの好きなんですよね。


 なにはともあれ、あんまりそういう一覧表を作る人もいないでしょうし、珍しいもん見た、くらいの気持ちで生暖かく見守ってください。

 なお、今多くの資料が手元に無いんで今まで関連資料を見てきた私の記憶に基づいて書いていきます。時間と資料が揃ったらあらためて<紅色経典>とそれらを巡る事象について書いていきたいと思います。



紅色経典とは?


 そもそも<紅色経典>って何か? 

 一言で言うと「建国後から文革以前までに作られた革命または新中国を讃える内容の著名な文学・映画・音楽作品」のこと。

「本章が定義する”紅色経典”とは1949年の新中国成立から1966年の”文革”が始まるまでの期間で、中国共産党が指導する各層人民が展開した革命闘争と民主建設およびその全面勝利を内容とし、労働人民が親しみ楽しめかつ民族的特色がある表現形式を用いて革命英雄主義と理想主義の激しい情熱にかられた文芸作品のことを指す。」(『中国類型電視劇研究』魏南江編/中国伝媒大学出版)



 元々は人々の懐旧趣味に訴えて革命歌のオムニバスCDを売ろうとした音楽業界が90年代頃に宣伝文句として創作した言葉がそもそもの始まりらしい。しかし、この<紅色経典>という言葉は音楽業界よりも映画界・出版業界で広く用いられるようになった。なにはともあれ、多分に商業主義と密接に関係ある言葉・概念と言える。

 代表的な作品は『紅色娘軍』『地道戦』『鉄道遊撃隊』『白毛女』『紅岩』など。

 文革以前までの作品が基本だが、文革期間中に上映された数少ない映画(『地道戦』など)や文革模範劇(『智取威虎山』など)も含まれている。ただし、一定以上の年齢の者であれば誰でも名前とあらすじくらいは知っているほど著名な作品でなくてはならない。


 作品内容の特徴として

  • 共産党が指導する革命・抗日戦争または新国家建設・反封建運動などを主な題材としている。
  • キャラクターの人物描写が画一的(共産党員や革命・抗日戦争の英雄は完全無欠な英雄として描かれ敵はとにかく何もかも悪い)で掘り下げられていない、と指摘される→<紅色経典>最大の欠点とされている。


といった感じ。また一般的に言って毛沢東など歴史人物が主要登場人物となることはない。しかし、作品には実在のモデルがいる場合が多い(作者の戦友など)。

 もちろんどのような基準をどの作品を<紅色経典>とするかの公の基準は存在しないのだが、だいたい以上のような傾向を持った作品が<紅色経典>の名をDVD会社や出版社に冠されて売りに出されている。




<紅色経典>のリメイクブーム


 紅色経典系作品は主として50年代~60年代に作られ、上記のような特徴(革命の無条件賛美,人物描写の浅さ)のため文革も終わり改革開放の時代になってもはや誰からも見向きもされずその役目を終えてしまったかに見えた。

 しかし、90年代になって興盛を極め始めたTV業界はかつて国民的人気を博したこれら一群の作品に目をつけ、音楽業界に倣って<紅色経典>の名を冠して改編を加えて連続TVドラマとして放送しはじめる。

「”紅色経典”は、商売人にとって疑いも無く垂唾ものの巨大なケーキである」(前出)



 その理由として

  • これらの作品は一定以上の年齢の者なら誰でも知っており、宣伝の経費が抑えられる上、人々の懐旧趣味によって安定した視聴率を確保できる。
  • 確かに人物描写は浅いが、物語の骨格自体はしっかりしており波乱万丈に満ち溢れているものが多くドラマ向きである。また「人物設定が単純」ということは逆に言えば肉付けのしがいがあるということで勢作側の創作意欲が発揮される余地がある。


があるという。また出版界でもこの改編ブームを受けて原作小説の復刻ブームが起こった(ただし<紅色経典>の「原典」は小説とは限らず、映画や舞台劇の場合もある)。



改編がもたらした騒動


 さて、そういうわけでTV業界では<紅色経典>改編ブームが起こったわけだが、それは思わぬ騒動も引き起こした。



 一つ目は視聴者からの「改編によって作品または人物のイメージを壊された」という抗議である。これは過度な商業主義に走ったため原典の持っていた「革命精神」や「階級闘争」などの要素が放棄され、センセーショナリズムを売りにした軽薄な内容になったためである(例:海南島での女性革命戦士たちの階級闘争を描いた『紅色娘子軍』が、軽薄なアイドルドラマのようになり「<紅色経典>は<桃色経典>か」という物議をかもした)。

 また、「英雄だって人である(「英雄是人」)」という考えの元、制作陣は主人公=英雄たちに短所や弱点、時にはやや薄暗い経歴まで付け加えたが、これも50~60年代に原典に親しんだ視聴者からすればイメージを壊される思いであった。(例:TVではないが革命劇『沙家浜』が連載小説化された際、主人公の女性が不倫をしているかのような描写がなされたため読者から抗議が殺到し、連載は打ち切りになったという)。

「こうして純潔な精神を持った英雄は、商業原則と経済戦略の下にある<紅色改編>ドラマの中にあって、人間らしさと普遍性という口実の下、感情と欲望を注入された愚かな俗物となり、”紅色”はどんどん曖昧に、どんどん貧血になるのである。」(前出)

「改編劇ではいわゆる”人間性”の高揚という口実の下、創作者は必然的に階級対立の要素を薄める。”情感無罪””恋愛至上主義”という商業論理に侵食され、革命の物語が書き改められている」(前出)



 二つ目はまた別の意味で深刻だった。実は原典となった作品は多くの場合、作者が革命または抗日戦争の過程で実際に体験したことや請け負った任務、現実に起きた事件をほぼそのまま使っていたりする(『鉄道遊撃隊』『敵後武工隊』『林海雪原』など)。そのため作中人物も作者の戦友など実在の人物をモデルとしており、しかも容易にそれが誰であるか個人を特定できるようになっている。

 そのため「英雄人物に人間味を加え」た結果、原典に比べて大幅に惰弱で愚かしい人間として描かれる場合があり、遺族から名誉毀損で訴えられることがあった(『林海雪原』)。またセンセーショナリズムに走り原作で抗日戦争を最後まで戦い生き抜いた人物を途中で戦死させるという改編をして放送したため、そのキャラクターのモデルでありなお存命であった人物が社会生活上の不利益を被るようになったことまである(『敵後武工隊』)



 このような一連の騒動を経て、ついに2004年には中国国家広電総局は『关于认真对待红色经典改编电视剧有关问题的通知(紅色経典改編TVドラマを真摯に取り扱う問題に関する通知)』を発布して、TV業界に過度の商業主義に走って「低俗」な改編を行い視聴者に作品の趣旨を誤解させることがないよう釘を指した。・・・・・・やーねー。


 このような通知が出ても2005年には『鉄道遊撃隊』が、2011年には『地道戦』などがTVドラマとして改編され、好評を博したり物議をかもしたりしている。




<紅色経典>メディアミックス一覧



 ・・・・・・やっと本題です。主な<紅色経典>のメディアミックスの様子をまとめてみました。「革命題材」が建国後どのように流布されていったかがなんとなくわかりますね。



『白毛女』 (一人の虐げられた女性を通して封建社会と地主の悪を描く)

スタート:民間伝説(?年)→オペラ(1945年)→映画(1950年)→京劇(1958年)→バレエ劇(1964年)→バレエ映画(1970年)→連環画(2010年)


『鉄道遊撃隊』 (抗日戦争時代、山東で活躍した抗日部隊がモデル。別名「飛虎隊」とも呼ばれた)

スタート:小説(1954年)→連環画(1955年)→映画(1956年)→連続TVドラマ(1985年)→連続TVドラマ「飛虎隊」(1995年)→連続TVドラマ(2005年)→連環画(2010年)→バレエ劇(2010年)→連続TVドラマ「鉄道遊撃隊戦後編」(2011年)


『林海雪原』 (第二次国共内戦の東北における匪賊掃討戦を描く。その中の一部分を使って「智取威虎山」という作品も生まれた)

スタート:小説(1956年)→革命現代京劇「「智取威虎山」」(1958年)→映画(1960年)→連続TVドラマ(2003年)→パソコンゲーム(不明)


『紅日』 (第二次国共内戦における華中での戦いを描く)

スタート:小説(1957年)→映画(1963年)→連続TVドラマ(2006年)→連環画(2010年)


『紅旗譜』 (三代に渡る河北農民の革命闘争を描く)

スタート:小説(1957年)→映画(1960年)→連環画(不明)→連続TVドラマ(2003年)


『沙家浜』 (抗日戦争で負傷した兵士たちが危機を脱する話)

スタート:劇「芦蕩火種」(1958年、「沙家浜」の前身)→革命現代京劇(1963年)→小説(2003年)→連続TVドラマ(2006年)


『敵後武工隊』 (抗日戦争時代、少数精鋭で戦う特殊部隊「武工隊」の活躍を描く。作者も元武工隊員で自分の経験を小説化した形)

スタート:小説(1958年)→連環画(不明)→映画(1995年)→連続TVドラマ(1999年)→連続TVドラマ(2005年)


『紅色娘軍』 (海南島で行われた革命闘争の女性部隊がモデル)

スタート:映画(1961年)→革命現代バレエ劇(1964年)→革命現代京劇(1974年)→連続TVドラマ(2005年)


『小兵張嘎』 (抗日戦争時代、水上遊撃隊が活躍していた水郷・白洋淀の村に住む少年が日本軍と戦う話。舞台背景だけを借りた「水上遊撃隊」という作品もある)

スタート:小説(1961年)→映画(1963年)→連続TVドラマ(2004年)→アニメ(2006年)→連続TVドラマ「水上遊撃隊」(2011年)


『紅岩』 (第二次国共内戦下での共産党員たちの地下闘争、青少年必読の書と言われる。派生作品として登場人物の一人に重点を置いた「江姐」がある)

スタート:小説(1962年)→オペラ「江姐」(1964年)→連環画(不明)→オペラ映画「江姐」(1978年)→連続TVドラマ(1984年)→連続TVドラマ(1999年)→連続TVドラマ「江姐」(2009年)


『地道戦』 (抗日戦争時代に河北平原で行われた地下道戦を描く)

スタート:映画(1965年)→連続TVドラマ(2010年)→バレエ(不明)


 ・・・・・・と、まあこんな感じになりました。こうやって並べてみると、中国の大衆メディアの移り変わりというか、革命物語流布の系譜がなんとなく見えてきたような気が・・・・・・しなくもない。

 中国式漫画(漫画と紙芝居を結合したようなもの)・連環画については売り出された年が不明なものが多いが、70年代80年代の不毛ぶりがひどく<紅色経典>が見捨てられる寸前であったのがわかる。

 しかし<紅色経典>は世紀を超えて次々と新しい生命を得て息を吹き返している。それは「革命の物語」が「商業主義」の力を借りて蘇ったという皮肉としか言えない状態だが、それでもその矛盾そのものさえも包括した上で、「物語」としての力と輝きを発揮し続けてほしいとは思う。あるいはそれこそが「新たな物語」を生み出す土壌となるのかもしれないのだから。そこにこそ、<紅色経典>が蘇った意味があるのかもしれないのだから。

« 『我的兄弟叫順溜』と『戦闘的青春』ゲット | トップページ | 雪だあああーーー »

雑談」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1302395/43147016

この記事へのトラックバック一覧です: 紅色経典メディアミックスの系譜:

« 『我的兄弟叫順溜』と『戦闘的青春』ゲット | トップページ | 雪だあああーーー »