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2011年7月24日 (日)

『鉄道遊撃隊』4話~5話 感想

感想

 こちらもだいぶ間が空いてしまいましたが、『鉄道遊撃隊』4話~5話の感想です。あらすじは『鉄道遊撃隊』4話~5話 あらすじ


 さて、今回は、鉄道遊撃隊の土台作り(義兄弟の契り!),李九大活躍,本作のヒロイン(未亡人!)芳林嫂登場、その合間に喧嘩や大立ち回り、三度劉邦の<爬車>とやっぱり高水準で楽しいストーリーが展開される。順に見ていこう。


 2話で「洋行」を襲撃したものの、直後に彭亮の恋人・藍妮に知られてしまった劉洪は、彼女に口止めし、彭亮も彼女に良く言って聞かせる、と念を押す。

 そんなある日、彭亮は事情を知らない魯漢から「お前も劉洪も漢奸だー!」と罵られて我慢できず「あの洋行襲撃は俺たちがやったんだー」とぶちまける・・・・・・って、藍妮の口止め役をまかされたおまえがあっさり暴露してどーする。

 この彭亮だけでなく、棗庄の協力者は口が軽いのが多いからなぁ~。劉洪たちの抗日活動の秘密は風前の灯だ。


 そして日本の経済力の素晴らしさで中国人をひれ伏させるため、「洋行」に復帰した金山によって開催される日本物産展と見せかけだけの「日中親善」(町の炭鉱を臨時休業させるなどして、労働者を参加させる)。盛大であるほど空々しい「日中親善」=「大東亜共栄圏」。よくわかんないけど、今では「日中友好」っていう言葉は使っても「日中親善」って言葉は使わないのは、こういう嫌な記憶がまつわる言葉だからかね?

 しかし、その日本物産展の目玉であった二羽のオウムは、怪盗ルパン・・・・・・じゃなくて「飛賊」李九にまんまと盗み出されてしまう! 

 ところで、「飛賊」って言葉かっこいいよね。李九が走る列車に飛び乗って盗賊行為を行い、しかも一種の義賊だから民衆が単なる「匪賊」と区別して同じ発音で「飛賊」って呼んでいるんだろうな。

 で、オウムを奪還するべく特務隊が李九の行方を探しまわるわけだが、大胆不敵な李九は籠に入れたオウムを持ったまま堂々と普通の乗客と同じように列車に乗車! 特務隊長の張三に見つかっても逃げも隠れもせず、余裕でタバコをふかしている。

Cap1296

見つかっても余裕な李九

 「奴を捕まえろー!」と、張三いかにもやられ悪役のセリフで数人の部下をけしかけるが、一対多数であるにも関わらず、突撃していた部下達はポンポーンと一撃でノックアウトされる(しかもこの時李九は椅子から立ち上がってさえいない!)。残った特務隊長・張三と副隊長・二牛は仕方ないので、二人で李九と決戦! スペースの狭い列車内バトルが始まる!

・・・・・・のはいいのだが、そのバトルがこれ↓である。

Cap1299

 
 そんなバカなーー!?

 狭い車内で天井にぶつからない程度にジャンプし、敵にまわしげりをくらわし、客席を蹴って縦横無尽に暴れまわる・・・・・・いやいや、ちょっとなんでいきなり昔の香港アクションムービーみたいな超人バトル展開に?

 なんだかなぁ、ここで急にこのドラマが安っぽくなっちゃったような気がする。今までの<爬車>にせよ、「洋行襲撃」にしろ、それは智恵と度胸と人並より少し上の体力があれば出来るものであった。「洋行」への侵入方法とかも現実的なものだった。

 リアル路線を追求しながら胸躍るヒーローものでもある、というのが『鉄道遊撃隊』のいいところだと思うのに・・・・・・ちょっとこのシーン浮いてるよ(注:しかし、このドラマを見ているうちにだんだんとこの感覚は薄れ、再びこの李九の車内バトルシーンを見た時には「李九、かっこええ~」とか普通に思うようになっていたから不思議だ)

 しかも李九はオウム入りの籠を抱えているのだが、それを手に持ったまま大きく回転し敵を牽制! そして、攻撃の際には天井にぶつからない程度に籠を上に垂直に放り投げ、籠が落下してくる前に敵の一人に一撃を浴びせ、ちょうど落ちてきた籠を今度は足でまた垂直に上に蹴り上げる!

Cap1297

画面右上の黒いのが鳥籠(オウム入り)

 ちょっとオウム! オウムかわいそう!! って言うか、そんな扱いしたら天井にぶつけたり籠を逆さにこそしていないけど、中のオウムショック死しちゃうよ!!

 でもそんな扱いされてもオウムは生きていた!! オウム最強!



 さて、そんな騒ぎとは特に関係無く、劉洪の元には連絡員を通じて党の上部から「民衆を組織して抗日の隊伍を組織するように」と極秘指令が来る。

 さっそく抗日部隊の基礎幹部として彭亮,魯漢,小坡を仲間にする劉洪と王強。そしてもう一人くらい必要じゃね? ってことで、やはり古い友人の林忠という男にも声をかけることにする。

何故ならこの林忠という男、投げナイフの達人だからだ!!

 ・・・・・・・・・・・・オイオイ、「投げナイフ」が重要な戦力になるってのもどうよ? それ以前に原作の林忠にはそんな能力無いのだが、どうやらTVドラマ化にあたってスキルアップが図られたようだ。そういや、彭亮も李九の弟子で武術の達人、って言うのも原作に無い設定だったな。

 しかし、この林忠という男、重大な欠点があった。そう、彼は賭博中毒だったのだ。

 劉洪らが抗日部隊に彼を入れる話をしていた時も、彼は賭博ですった金を賭博で取り戻そうと、「やめてーそれは子どもの給食費!」とばかりに泣いてすがる妻を「うるせー倍にして返してやるぜ!」とばかりに残り少ない(←賭博で使っちゃった)家の財産をかき集めて賭博場へ。

Cap1301

賭博で負けたので乏しい家の財産をかき集めてまた賭博場へ向かうダメ男

 しかし、質に入れようと持っていたものが盗品ではないかと日本軍憲兵からあらぬ疑いをかけられ、窮地に陥った林忠は投げナイフで憲兵らを牽制し逃亡。逃げていたところ王強に匿われ難を逃れる。

 ・・・・・・って、投げナイフで完全武装の憲兵と渡り合うってこっちもどんな超人バトル!?

 そして逃げる前に賭博場で特務隊の張三とのバトルもある。張三はザコキャラかと思ったが、意外と武術の達人だった。ここでも二人で空中戦まがいの超人バトル! 駆けつけてきた日本兵たちも空中で戦う中国人二人にしばし見守ることしかできない!

 もう李九といい林忠といい、一つの街にこんな超人が何人もいたんじゃ、日本軍も大変なんじゃないかと思うが・・・・・・まあ、これはアレだ。棗庄がちょっと特別なんだ、李九の存在が棗庄の荒くれものたちのバトル能力の底上げになったんだ、と合理的に解釈してみよう。



 さて、あれやこれやで林忠も仲間に加わり、ついに抗日の「鉄道遊撃」が結成される。

 結成にあたり劉洪、王強、魯漢、小坡、彭亮、林忠は杯を酌み交わし義兄弟の契りを交わす。

Cap1304

義兄弟の契りシーン 

 私、このシーン見てわかったことがある。

 今回、いろいろツッコンだけど、このドラマと原作小説はやはり圧倒的に面白いのだ。この面白さの源泉は何なのか? 確かにこの作品のテーマは革命と抗日の物語ではある。しかし、その中にまだもう一つの姿がある。

 そう、この物語の底流を流れる精神は『水滸伝』のノリであるのだ。

 実は私まだ『水滸伝』ってちゃんと読んだことないけど、『水滸伝』がこうも中国の民衆に受ける理由というのは、好漢たちが一同に集って権力と波乱万丈の闘いを描くのと、男たちの「」を描いたからではないかと思う。「義兄弟」という点に注目すれば、『三国志』の要素も入っている。

 まあ、現代の民族性と古典文化を安易に結びつけることは慎むべきだが、『鉄道遊撃隊』が好評を博したのは絶対にこの「男達の義」の物語が作品の根底にあるからだろう。それは通常の抗日・革命ものにある共産党の「同志の連帯感」とは一線を画す(しかし、中国の共産党であれ国民党であれ、そのような『水滸伝』的な「義」の結びつきと無縁かというとそうとも言えない)。作者の劉知陝は『水滸伝』のような章回小説(各章が第N回なっているやつね)の技法を小説に取り入れたと言っているが、取り入れたのは技法だけでなくその精神もであろう。


 ともかくクセのある好漢たちが義兄弟の契りを結び、抗日組織を結成! メンバー6人のうち4人がアル中(魯漢)、賭博中毒(林忠)、子ども(小坡)、口軽い(彭亮)の抗日組織!

 ・・・・・・・・・・・おいおい、そんなメンバーで日本軍と戦って大丈夫かぁ?・・・・・・・と、読者(視聴者)をちょっと不安に追い込むのも、この作品のミソですかね?


ピックアップ場面

ゲンキンすぎる男たち

 賭博場へやって来た魯漢。そこでよそ者(近隣の街・臨城)の田六子が幅をきかせているのを知って、田六子ら臨城の若者たちと賭博場の客らを巻き込んで乱闘に。しかし、棗庄の滑子はそんな騒ぎは我関せずといった様子で一人賭博で儲けた金の勘定。魯漢は乱闘しながらそんな滑子を怒り

魯漢「滑子! おまえはそれでも棗庄の人間か!? ヤレ!」

滑子、魯漢を再び乱闘の中に押しやって床に散らばった金も拾い集める

滑子「いやぁ、うちには女房とガキがいるんでね。ケンカしたいなら勝手にどうぞ、俺の知ったこっちゃない」

 ますますヒートアップする乱闘。吹っ飛ばされる臨城の虎子。

田六子「虎子! どうした」

虎子「兄貴ぃ、やつが・・・・・・」

田六子「この野郎!」

賭博場主「アイヤー、やめろ、やめてくれぇ! ああもう!」

 その間にも金を数え終えた滑子は悠然と賭博場をあとにしようとする。

Cap1292

乱闘にも我関せずの滑子

魯漢「滑子! おまえも戦え! それでも棗庄の人間か! 洪の兄貴が戻ってきてるんだ! 俺らに怖いもんなんてねぇ!」

滑子「・・・・・・・・・洪の兄貴が帰ってきた? ・・・なら俺もやってやるぜ!!」

Cap1293

劉洪が棗庄に帰ってきていると知って豹変しすぎの滑子

 滑子一転して乱闘に飛び込み参加。そこに劉洪登場。

劉洪「やめろ!」

 乱闘、一瞬で止まる。

魯漢「洪の兄貴! 奴らが先にやりやがったんだ。俺らの地盤で自分らの物を質に入れやがって」

田六子「お、俺らの商品の方が安いんだよ!」

劉洪「六子兄弟。すぐに兄弟たちを連れて帰りな」

魯漢「なっ!」

劉洪「魯漢、もしまだ俺のことを兄貴と思っているなら、黙って奴らを行かせてやれ」

田六子「洪の兄貴、それではまた後日。兄弟たち、いくぞ!」

 と、まあ棗庄の男たちの現金ぶりと、めちゃくちゃな乱闘シーン、劉洪の総元締めぶりが楽しいシーンである。


使える者はなんでも使う王強

 張三の特務隊に追われ、たまたま王強たち「洋行」の労働者たちが積み込み作業をやっていた駅に逃げ込んだ林忠。王強は彼に作業帽をかぶせ、労働者たちの中に隠す。そこにやって来る張三。

王強「おや、張三隊長でしたか。お疲れさまです。(声を潜めて)ここの連中は調べるまでもないですよ」

張三「ふん、毛候子(劇中で列車どろぼう、ちんぴらの意味)がそっちに逃げたのだ。おまえ、見たか?」

(略)

王強「張隊長。私はずっとここで監督していましたが、毛候子なんて見ていませんよ。ちょっと待っていてください・・・・・・兄弟たち、張隊長はご公務で来られた、彼によく協力するように。誰か毛候子を見た奴はいるか!?」

労働者たち『見ていません』

王強「ならいい、仕事に戻れ」

(労働者たち、仕事に戻ろうとする)

張三「動くな! 一人ずつ調べる!」

(特務隊員たち、労働者たちを調べようとする)

王強「やめろ!・・・・・・張隊長、いけませんよ。金山社長から必ず十時前に荷物の積み込みを終えるよう言われているんです。金山社長の言いつけを破ることはできません! 張三隊長、金山社長は怖い方です、怒らせてはいけません」

(金山が張三の後ろにやってくる)

張三「はっ、何が金山社長だ! 松崎太君が死ななければ奴の出る幕なんて・・・・・・」

金山「馬鹿野郎!」

(金山、張三を殴り飛ばす)

金山「貴様はなんて奴だ!」

張三「・・・・・・太、太、太君! 今さっきここに毛候子が逃げ込みまして・・・・・・」

金山「毛候子・・・・・・何が毛候子だ!貴様こそ毛候子のようなものだ! 馬鹿野郎!」

(金山、拳銃を取り出す。王強、慌ててとめる)

王強「社長、社長。張隊長はご公務中です。撃ってはいけません。それに仕事が遅れてしまいます」

金山「(張三に)・・・・・・失せろ!」

張三「は、はいっ!!」

 と、ますますしたたさに磨きがかかった王強。

 日本側は「華を以て華を制する」などと言っているが、逆に日本人・金山の権威を利用して特務隊を蹴散らす王強。これ以外にも王強は何度も憲兵隊の疑惑から金山の力を利用して身を守っている。まさしく「日本人を以て日本軍(&対日協力者)を制する」状態。そして、このように何度も捜査を邪魔されるので憲兵隊(&特務隊)の金山に対する恨みもつのっていくのである・・・・・・。




義兄弟の契り

 最後は、抗日組織の結成・・・・・・と言うより「義兄弟の契りの場面」。

劉洪「兄弟たち。上に天有り、下に地有り。今日、ここより我々は義兄弟となる。我、劉洪、この酒を飲み干して誓う。兄弟たちに対して決して不当な扱いはしない」

王強「幸せも苦しみもともに分け合う。死しても亡国奴にはならない」

彭亮「誰であれ、兄弟を裏切った者には天誅を下す」

魯漢「生まれた日が同じであることは求めない。ただ同じ日に死ぬことだけを願う」

小坡「俺はみなについてここまで大きくなりました。あなた方は俺の本当の父母も同然です。今後、あなた方がやれといったことは何でもやります」

Cap1302

魯漢「洪の兄貴がやれって言うなら、俺だってなんだってやるさ。俺はいくじなしじゃねぇからな」

彭亮「そうだ、俺たちが誰も臆病者じゃない」

五人『洪兄貴、俺たちに何でも言ってください』

劉洪「列車から銃を奪い、鬼子を倒す」

五人『好! 打倒鬼子!』

 六人乾杯をする。

 ・・・・・・なんかいろいろすごいよね。




歴史解説

 ところで、劉洪が棗庄に戻り幼馴染を「義兄弟」として抗日に組織したことについて、根拠となる史実かもしれないことを見つけた。

 それは中国共産党が日本軍に占領された都市部をかく乱するために、組織した「三人団」というものである。以下、『中国抗日戦争史』(菊池一隆/有志舎)の記述を紹介してみよう。(太線強調はブログ主)

 (前略)基本、「紅軍」(この時期なら八路軍)のうちから三〇〇〇人を選抜(略)、行動組織訓練団を組織し、基本工作の技術(市街戦の訓練を含む)、組織のつくり方および連絡方法を訓練して、二月中旬に各地に派遣し、準備工作を命じた。そこでは、一人につき100元を支給し、都市に潜入、まず自らの生計を立てるため、労働者・商人・人力夫などになったり、あるいは市民層の生産組織に参加する。100元のうち、50元が組織化費用である。その対象は無産労働者階級、三五歳以下の者、家族などがいない者、「悪癖」(アヘン吸引など)や病気の無い者の四原則である。ただし選抜するのは二人とし、八路軍からの派遣者一人を加えて計三人とする。この後、直ちに二人に技術訓練・思想教育を施すが、思想の徹底的な改変の前に共産主義を宣伝する必要はないとする。また、共産主義化が不可能な者には「義兄弟結盟」を初歩工作とする。(略)

 では、三人団の任務とは何か。①都市交通の中枢破壊、②軍駐屯地区域への攻撃、③軍事・経済の重要建物に放火、④軍事機関の破壊、⑤経済・金融・交通・電力などの機関の破壊、⑥日本・傀儡の軍政要人住宅の破壊・焼殺といったところである。(略)

 「桃園の誓い」、ハンパねぇぇぇーーー!!!!

 ・・・・・・・いやいや、一チーム三人って言うのは、別に劉備・関羽・張徳の桃園の誓いを意識したんじゃなくて、それが占領地で暗躍する上で最適な人数だとかいう合理的な理由だろうが(たぶん)、やっぱり、「中国」「三人」「義兄弟結盟」なんて組み合わせみると、どうしても発案者の頭に某三国志があったんじゃないかと邪推しちゃいますね。

 『鉄道遊撃隊』の作者、およびドラマ監督がどれだけこの史実上の「三人団」作戦と関連付けていたかはわからない。ただ、劉洪が棗庄に帰ってきたのは、ちょうどこの「三人団」作戦が発動された時期と符号するし、裏で特務機関をやっていた「洋行」襲撃や列車からの物資奪取なども三人団の任務に合っている。(ただ、作品中の劉洪は最初から共産党員で作者らが「三人団」を意識していたとも考えられるが、モデルとなった洪振海は非共産党員でほぼ独自で抗日活動をはじめ、後に共産党に合流した)

 また、次回以降の話になるが、「生計を立てるため」劉洪は事業を始める。

 劉洪が組織した人数は六人だが、王強と三人ずつ分け合っていると見れば、二人がそれぞれ「三人団」を作ったと解釈できる。しかも、結成の段階で劉洪は実は自分が共産党員であることも、これからの抗日活動が共産党の指揮下に入ることも明かしていない。王強に至っては、「列車どろぼう」を効率的に行うために徒党を組んだほうが便利だ、というふうに説明している。

 まあ、実際の作者らの考えはわからないが、こういう史実と照らし合わせてみるといろいろ興味深い。

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