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2011年6月12日 (日)

『地道戦』後半 感想

 先日、近くの図書館で『地道戦』の上映会やっていたので見てきてしまいましたーsnow

 しかも無料。最近は共産党誕生90年の関連で近くの図書館で良くこの手の映画の上映会やっとるのですよ。 

 いやぁ、せっかくの機会だからちょっと大画面で『地道戦』見てぇ~、と思いまして。。まあ、上映を企画した側は、国民に共産党のすんばらしさを宣伝するのが目的で、日本人オタク女が見に来るとは一ミクロンも想定していなかったでしょうが。

 で、こんな60年代の人民戦争勝利万歳映画(いや、いい映画ではあるのですが)今更無料でも誰も見ないだろうなぁ~、と思って開始時間に行ってみたら予想通り私を入れて5人しか入ってなくて吹いた(しかも一人は日本人だしな)。でもまあ、それでもその後ちらほら見に来る人が増えて最終的には20人前後入りましたが・・・・・・まあ、無料でもこれだけかよって話ですが。


 それはともかく、大画面で見る『地道戦』はやっぱりなかなか良かったです。特に冒頭の緊急事態を告げる鐘の音が村に響き渡る場面、一面の麦畑の穂が風にたなびく中を主人公が負傷した村長を背負って戻ってくるシーン・・・・・・もう不吉さがハンパじゃなくてすごいシーンです。

 でも一番すごいのは、そうやって観客の不安が極限に達したところで始まる日本軍の侵攻シーン。これは本当に名シーン。

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 私は今まで多くの抗日モノを見てきて、その中で日本軍の残虐行為を克明に描く作品も見てきましたが・・・・・・でもそれらと比べても『地道戦』のこのシーンは印象に深く残ります(<戦闘シーン>では『狙撃手』の11話~12話が屈指なのですが)。べつに『地道戦』は他の作品と比べて日本軍の残虐シーンを克明に描いてはいないのですが(むしろ描いていない)、この日本軍が「突撃!」の声とともに大挙して平原を駆け抜けていくシーンがもうゾクゾクするほど怖い。しかも白黒映像なんでかえって臨場感がすごいことに・・・・・・。住民にとっていかに日本軍が恐ろしい存在だったが、百の残虐行為を描くよりも、この進撃シーンが如実に語りつくしているのですよ。大量の火薬や流血に頼らなくてもそういうのは表現できるのです。

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 後で書きますが、最近この映画『地道戦』をリメイクしたTVドラマ『地道戦』を見たのですけど・・・・・・やはりあの冒頭の日本軍進撃シーンははずせないシーンであったのか、第一話で展開から構図まで忠実に再現しようとしていました・・・・・・でもカラーなのに全然印象深くないんですよね(笑)。

 で、映画を通しで見た感想ですけど、全体として良い出来であるという評価は変わりませんが、やはり冒頭のインパクトが強すぎるのか、どうもだんだんと勢いが失速している感は否めなかったかなぁ、と。特に中盤はちょっと中だるみ気味になりましたね。



 と、前フリが長くなりましたが、長らく遅れていた映画『地道戦』レビューの最後、後半の感想を書いていきます。


※以下、映画『地道戦』のラストまでのネタばれを含みます。




後半の勢いはいまいち

 さて、後半=映画残り30分は、高家庄に進攻してきた日本軍を三度にわたり撃退! さらに日本軍の拠点である砲楼も撃破して傀儡軍の湯司令を倒し、山田隊長を生け捕って抗戦勝利! と一気に怒涛のハッピーエンドを迎える。

 う~ん、私は『地道戦』という映画は好きなのだけど、やはり苦労に苦労を重ねていた前中半に比べ、後半はすべてが順調に行き過ぎていまいちインパクトにかけると思う。いや、ここで怒涛の快進撃が前中半の苦難に報いるようなカタルシスとなれば良かったと思うのだけど、それを目指したかもしれないけど失敗しているというか、60年代映画の限界と言うか・・・・・・。

 どうもストーリー展開のテンポがちぐはぐなんだよ。そこでもう少しテンポ良く、とか、そこはもっとくどくしていいのに、とか・・・・・・ここぞという場面で画面の構図やBGMが変でいまいち映画の世界にのめりこめなくなってしまっているんだよね。


 でも、最後に男達が日本軍の拠点を攻撃するために村を出て行き、その作戦に気づいた日本軍が女手だけになった高家庄を襲いに行くという展開は、映画最後のハラハラシーンになって良かったと思う。

 ちなみに「女手だけになった今が村を襲うチャンス」みたいに考えた日本軍にツッコミ。


いや、中国の女って時に男より恐ろしいですからーー!!

 ほんと、うかうか侵攻してきた日本軍に対して一分の容赦もしなかったね~、むしろ男の民兵たちよりもえげつないんでない?

 女だけになった自分達の村に日本軍が向かったという情報を知っても、主人公の高伝宝たちは「女たち(と地下道)の力を信じよう」とばかりに村に戻らず作戦続行、いや、村から逃げ帰ってくる日本軍を襲おう!という方針にしたのもさもありなん。ほんと、頼りになる女たちだった。(むしろここで男たちが救援のために村に戻ったりしたら、女たちから「なんで作戦変更して帰ってきたーー!」とどんな恐ろしい目に合わされるかガクガクブルブル)




軍事教育映画の本領発揮

 
 以前も書いた通り、この映画は実は文革時代の毛沢東の人民戦争理論に基づいた<軍事教育映画>として作られた。文革時代の10年間、中国では4本の映画しか上映を認められなかったというが、実はこの『地道戦』はその上映された4本の映画の一つなのだ。

 しかし、そんな<軍事教育映画>と言っても前中半では毛沢東の『持久戦論』などが語られてはいたが、映画のストーリーの中にうまく溶け込んで(物語の一要素となって)いてあまりそういう映画であることは感じさせなかった。

 

 ところが後半になると奇妙なナレーションが頻繁に劇中に流れてくる。例えば「家の中から屋根の上まで、地下から地上まで、我々はあらゆる場所を縦横無尽に動き、戦闘の主導権を握り、至る所で敵を打つ」(←これ登場人物のセリフじゃなくてナレーションなんだぜ・・・)「煙は有害である。必ずすべて排気するように」などなど・・・・・・いやいやいや、それなんて実践的な戦闘解説?

 日本軍との戦闘場面もね、映画の中のシーンと言うよりは、まるで映像戦闘マニュアルみたいになってしまって・・・・・・後半のテンポが崩れるのは絶対にこの映画の戦闘マニュアル化が原因の一つだと思う。

 もう「なぜ戦うか?」なんてブルジョア的なテーマはお呼びじゃない! プロレタリアに必要なテーマは「いかに戦うか?」だ!・・・・・・的な漢らしい主張を感じる。



 しかもこのナレーションっていかにも取ってつけた感があるんだよね。なんか監督が「おお、そう言えばこの映画は『軍事教育用』に依頼されてたんだって、忘れてた」とばかりに慌てて後半にそれっぽいナレーションを詰め込んだか、はたまた映画を撮るために『軍事教育用』って注文を受け入れて自分の撮りたいように撮った後に適当にそれっぽい場面を詰め込んだ、ということではないかと勘ぐりたくなるようなやっつけ仕事ぶりだった。

 まあ、その真相はともかく(監督が本気だった可能性も無きにしもあらず)、<軍事教育映画>であったため何かと不自由した面もあったようだ。

在第一稿剧本中我设计了许多“博观众一笑”的细节,但是都在审查时被删除了。例如:民兵队长和未婚妻子在地道里谈情说爱,大康和妻子在地洞里生孩子,淘气儿和素云吃烙饼逗乐子,牛娃从射击孔拽拉伪军腿等等。它们都被认为是没有任何教育价值,反而会冲淡主题,扭曲革命历史的真实性,脱离《地道战》主线的累赘。

第一稿には多くの観客を楽しませるシーンがあったが、これらはみな審査時に削除されてしまった。例えば、民兵隊長と彼の婚約者の愛情物語,大康の妻が地下道で子どもを出産するシーン,淘気と素雲が焼き餅を食べて楽しい一時を過ごす場面,牛娃が射撃孔かた偽軍兵士の足を引っ張るシーンなど。これはみな何の教育的価値も無く、テーマの邪魔となり革命史の真実性を捻じ曲げ、『地道戦』のメインストーリーからはずれるものと見なされた。

http://book.sina.com.cn/nzt/ent/dianyingbainian1/138.shtml

 えええー! べつにいいじゃんと思うけどね。映画なんだし、話の味付け的な細かい点でそんな真実性を求めなくたって。それに教育的価値が無いって、実際の戦争だと妊婦が避難先で出産することだってあるんじゃないの? なんにしろ、そういうのを入れたらもっとおもしろくなったと思うけどね。



『水は大切にね☆』

 その実践マニュアル的な場面の中でも一番笑えた、と言うよりもはや傑作のレベルに達していたのが、日本軍の水攻めに対処するシーン。

 地下道にこもった民兵や村民を追い詰めるため、日本軍はポンプを持ち出して村の井戸から水を汲み上げ、住民が入った地下道に大量の水を流し込む・・・・・・のだが、すでに失敗から学んだ村人たちは地下道の中に水路を作っており、外から水を流し込まれてもすべてその水路に流れて外に排出される仕組みを作り上げていた。で、その水が水路を通って排出されるシーンでこんなナレーションが


『水は貴重なものである。元の場所へ戻すべきだ』

 そして画面には地下道の水路を流れた水が、日本軍が地下道に流し込むための水を汲み上げている井戸に戻ってくるところ映し出す・・・・・・。

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地下道から排出された水(左)と地下道に流すために汲み上げている日本軍のポンプ(右)

 もうこの時のナレーションの冷静な口調と、画面のシュールさが爆笑もので、「そ、そうだよね、水は貴重だから、井戸に戻すべきだよね(汗)」と納得してしまうよな意味不明な説得力がある。すばらしい、これはなんて現実的な「軍事教育」なんだ。




傀儡軍(漢奸)は許されない?

 で、映画のラスト。河北平原の支配の象徴であった日本軍の砲楼を大量の爆薬で爆破した高伝宝たち。そこに高家庄の女達に撃退された山田隊長と傀儡軍の湯司令が逃げ戻ってきて、高伝宝ら民兵に包囲される。

 高伝宝らは二人に武器を捨てて投降するよう呼びかけるが、まず湯司令が銃をかまえて無駄な抵抗を試み、射殺されてしまう。続いて、山田隊長も日本刀を振りかざして抵抗を試みるも、彼も撃たれてしまう。しかし、どうもこの銃撃は山田隊長の日本刀落とさせただけで、彼を殺してはいない。

 つまり傀儡軍の中国人・湯司令はあっさり殺されたにも関わらず、日本軍の山田隊長は生け捕りという結果になった。ここになんだか、私は「外国人である日本人は許してやってもいいけど、中国人でありながら民族を裏切った者は絶対に許さない」という複雑な心境が読み取れてしまう(監督がそこまで意識して描いたかは分からないが)。

 う~ん、このへんの話って本当に複雑でとても簡単にはどうこう言えないとは思うんだよね。実際、中国に限らず植民地とかでさまざまな理由から植民地の人間なのに支配者側についてしまう人の存在ってのは、植民地側のその他の人からすれば本当に頭が痛い問題と言うか、直接的な災厄となる場合だってあるし。

 特に抗日戦争時の傀儡軍・対日協力者の問題ってのは、本当に重い問題で、あまりに重過ぎて私もなかなか深く考えることができないでいるのだけど・・・・・・それでも日本の一部にある対日協力者の戦後の過酷な運命を歴史的文脈から切り離して取り上げて(ダシにして)中国(国民政府or中共政府)の野蛮さ残酷さの例証とするために語るような言説には絶対に組したくない。

 対日協力者の問題で私が唯一納得できたのは、今のところ笠原十九司先生の『日本軍の治安戦』のエピローグ部分。あれはなかなか納得できたし、問題の所在がどこにあるかもはっきりできた。


 ところでこの対日協力者問題だが、最近の抗日ドラマでかなり興味深いのがいくつかあった。具体的にはTVドラマ用にリメイクされた『地道戦』と『水上遊撃隊』で、『地道戦』については今度ちょっと触れてみたい。湯司令のキャラ補正がハンパないから!(笑)





地道百景

 では、今回も映画の中で描かれた「地道」を詳しく紹介。


 まず、中盤に現れた偽武工隊と彼らが連れてきた少数の部隊を撃退した高家庄に日本軍&傀儡軍の部隊が再び来襲する場面(上で書いた「女手だけになった村」とはまた別)。高伝宝ら民兵はまず村の入り口で日本軍を食い止め、村への侵入させまいとするのだが、日本軍の圧倒的な火力の前に成す術がない。そこでいきなり高伝宝が↓な点を

高伝宝「撃ち方止め」

民兵1「大康兄貴、隊長が撃つのを止めろって! 日本兵を村の中に入れてやれて!」

大康「なんだって!?」

民兵1「だから、日本兵を村に入れろってさ!」

(中略)

林霞「伝宝。あなたの考えをみなに教えてあげなさい」

高伝宝「日本兵が村に入ってしまえば、日本軍のあの立派な大砲ももう撃つことはできなくなる。奴らの長所が発揮できなくなる。代わりに俺たちの土砲や土銃(手製の大砲や銃。威力は通常の武器より大幅に劣る),手榴弾,地雷が威力を発揮できるってわけだ」

 まったくその通り。敵の長所を最大限殺し、こちらの長所を最大限生かす戦いこそゲリラ戦の真髄であろう。このまま抵抗を続けても村が灰燼に帰すだけ。それより住民はみな地下に隠れて日本兵を村に入れてしまえば、味方を巻き添えにするから日本軍の立派な大砲も宝の持ち腐れとなる。

 さて、ではわざと村への侵入を許した日本軍に対し地下道をどう使って戦ったか。

Cap983

 連絡は竹筒で。命令は「一発撃つごとに居場所を変えろ」。これで民兵たちは地下道を使って村の中を縦横無塵に攻撃できる。

Cap984

 中継地点の人が皆につなぎます。

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(地下道ではないけど)壁の間から銃で狙い撃ち。中国の農村家屋には、二重壁になっていて、その壁と壁の間に人が入れるような挟壁という構造を持っているものがある。

 「撃て」の合図とともに村中の壁という壁から射撃孔が開き、いっせいに日本兵を狙い撃つ。彼らは次々と居場所を変え、日本兵は姿の見えない射撃と手榴弾に右往左往する。

Cap987 

(よく見えないだろうけど)井戸の隙間からも射撃できるよ! 日本兵の下、画面中央下からの井戸から銃口が突き出ている。

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リズム感ある右往左往ぶりの日本兵

 この一連の反撃シーン、何か見たことがあると思ったら、音楽,画面構成,人物の動きがまるで京劇の大立ち回りシーンを見ているよな気にさせる造りになっているようだ。なんと言うか、見えない敵に翻弄される日本兵の動きがとてもリズム感があるんだよね。たぶん、監督は京劇の舞台芸術の方法を多いに参考にしているのではないかと思う。

Cap993

地下道に侵入した敵は落とし穴に落とそう。

Cap994

入り口からは一人ずつしか降りれないし、手も塞がっているので、横穴からの一撃で。

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で、煙を排気するのもばっちり。


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あ、逃げようとしても村の出入り口にはばっちり地雷原と落とし穴用意してるから☆逃げられないよ☆






Cap998

 ラスト。彼我の力が逆転し、日本軍の拠点にいっせい攻撃を仕かけるため民兵たちが次々と土の中から飛び出してくる映画最大の見せ場。主題歌『地道戦』もBGMで流れ、盛り上がりっぷりがハンパじゃない。





 と、いうわけで映画『地道戦』の紹介は終わり。後半はいまいちなものの、全体的に戦前の少年活劇もののような面白さを持った良作でした。

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