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2011年4月 8日 (金)

『鉄道遊撃隊』1話 劉洪、棗庄に帰る

あらすじ

※中国人=青,日本軍・日本人=緑で表記しています

 1937年の盧溝橋事件を機に日本軍は中国に全面侵略を開始。炭鉱と鉄道の街・山東省の棗庄も日本軍の支配下になり、華北の重要な鉄道の一つ・津甫路も日本軍の管理下に置かれる。 

  数年後のある夜、その津甫鉄道を走る列車に一人の男が飛び乗る。列車の屋根から様子を伺うとそこには「先客」がいた。お互いの姿を認めた二人はそのまま走る列車の屋根の上で格闘を開始。しかし、相手が誰なのか気づき、鋒をおさめる。

 列車に飛び乗った男は劉洪。何年かぶりに故郷の棗庄に帰ってきたところだ。「先客」の男は劉洪の古い知人の。李九は、最近日本軍の警備が厳しく思うように【両条】をやって(両条=二本の線路、鉄道の意味。ここでは列車に忍び込んで運搬物資を盗む列車どろぼうの隠語)ができないとグチを言う。二人は日本兵の発見されたので、それぞれ列車を飛び降りて別れる。

 列車の中にいた日本軍の高官は騒ぎを聞き、棗庄駐屯部隊の隊長・小林と憲兵隊長の岡村に八路軍の115師が山東に進出してきたという情報を伝え、日本軍の大陸での戦いにおける津甫鉄道の重要性を説き、何としても鉄道の安全を保持するよう命令する。

 翌日、久しぶりの棗庄を散策していた劉洪は、ある薬局の店主が日本軍の憲兵に連行されていかれるところを目撃する。偶然、そこに弟分である魯漢小坡が通りかかり、三人は再会を喜ぶ。

 魯漢と小坡は、日本軍のバックアップを受け退役した日本軍人が経営する商社「洋行」で一労働者として働いていると近況を話す。また、幼馴染の王強がその洋行の中国人労働者に対する管理人として日本軍の手先になってしまっていると言うが、劉洪にはとても信じられない。

 件の王強は、「洋行」の会計係である金山に高価な置物を送るなどして歓心を買い、金山も王強に目をかけてやっていた。

Cap1278

日本人経営者・金山(右)に取り入る王強(左)

「洋行」には金山の他にも二人の日本人がいてそれぞれ経営者と副経営者をやっている。しかし二人は金山をのけ者にして洋行の金を着服しており、自分も私腹を肥やしたい金山は労働者たちの給料をピンはねすることを思いつく。王強は「これ以上減らされたら彼らは生きていけない」と諌めるが、金山は「辞めたい奴は辞めればいい、代わりはいくらでもいる」と取り合わない。

 給料が減らされた魯漢ら労働者は直接の管理者である王強に猛然と抗議し、洋行は騒然となる。怒った金山が銃を取り出すが、王強は両者の間に入って大事になるのを防ぐ。その夜、王強は帰宅中に魯漢らに襲われ「日本人の手先」としてぼこぼこにされる。何とか帰宅すると自宅にも魯漢たちは来ていたらしく、めちゃくちゃにされた部屋を老いた父が片づけていた。

Cap1279

夜道で魯漢らに襲われる王強

  魯漢たちから話を聞いた劉洪は王強を訪ねる。王強はかつて劉洪の育ての親代わりである姉夫婦が日本軍に殺された件を気遣う。劉洪はなぜ日本人の下で地位のある仕事に就いているのかと問うが、王強は「金が儲かる」というばかり。劉洪は、自分は魯漢たちと違いおまえを漢奸(民族の裏切り者)だとは思っていないと言って協力を求める。日本軍が鉄道を使って武器を輸送する時は自分に知らせてほしい、と頼み、王強は理由を尋ねるが劉洪は答えない。

 翌日、ちょうど日本軍の武器輸送がなされることになり、王強は汽車が通る時間とどの車両がそうか教えてやる。劉洪は、魯漢と小坡に見張りを頼み、自分は得意の【爬車】(走っている列車に飛びつき、乗り込む技術)で列車に侵入し、目的の貨物車両をこじあける。

 しかし、そこには武器ではなく十数人の軍人たち。予想外のことながら、そのうちの数名の日本兵と劉洪は拳銃で交戦し、なんとか彼らを倒す。そして残りの十数人は日本軍の捕虜になった国軍の将兵たちであった。異常に気づいた日本軍は列車を止め、劉洪は捕虜たちの拘束を解いて逃がしてやり、自らも日本軍の追撃を振り切って魯漢たちの元へ戻る。 

Cap1283

国民党軍の捕虜たちを逃がす劉洪

 偽の情報を摑まされた劉洪は王強の裏切りを確信し、三人で「落とし前」をつけに行く。しかし王強は誤解だと主張し、さらに劉洪と二人で話をしたいと懇願する。その願いを聞き入れられた王強はふいに「薬屋の店主は日本軍に殺された」と話し出し、劉洪がその店主に会おうとしていたこと、彼の墓参りをしたことを指摘する。劉洪は棗庄に帰って以来、王強が自分の跡をつけていたことに気づき尋ねる。

「おまえは何者だ」と。

Cap1284

王強の「正体」に気づきはじめる劉洪




感想


冒頭

 文章だけだといまいち伝わらないかもしれないが、なかなか期待を持てそうな出だしである。やや問題ある原作の出だし(なにしろ冒頭が回想と会話だけで話が進められるのだから)と違い、ドラマはリアルタイムの進行で主人公の劉洪が何年かぶりに日本軍占領下の故郷・棗庄に帰ってくるところから始まる。その他にも原作とは大きく違う箇所があり(重要なネタばれになるので今後のエントリーで書きます)、小説既読の視聴者も先が気になる造りになっている。

 物語の重要なキーとなる【爬車】も冒頭から早々に披露。

 【爬車】とは何かと言うと、走っている列車に飛び乗ったり飛び降りたりする技術のこと。なんでそんな技術が必要かというと【二本の線路で食う(吃両条)】のため。【吃両条】とはなにかというと、早い話が貨物どろぼうである。【爬車】によって気づかれずに貨物列車に潜入し、めぼしい貨物を列車から外に放り投げ、また走っている列車から飛び降りその貨物を拾うというわけ。

 原作では、線路沿いに住む貧しい炭鉱労働者や鉄道労働者が食うに困った時にこの【爬車】によって石炭を盗み、糊口をしのいでいることが説明されている。主人公の劉洪は子どもの頃からこの列車飛び乗りというスリルにはまり、いまや棗庄周辺で有数の【爬車】使い(?)となっている。

……まあ、冒頭で劉洪が【爬車】を披露する物語的な必然性と、しかもその後、列車上で李九と車上バトルを繰り広げる物語的必然性がよくわからないのだが……まあ、制作陣が何かとサービス精神旺盛なのはわかった。

Cap1277

サービスサーービスな車上アクション


 あと、この【爬車】というのは現実に存在した技術であり、誰にでもできるわけではないが、運動神経や腕力,度胸などに優れていればできないことはない言わば「人間技」の範疇に入る技術なのだが……冒頭の劉洪の【爬車】は完全に物理法則を無視しているようにしか見えん(汗)……明らかに重力とか慣性の法則に何メートルか逆らって空飛んでる……。全部こんなノリだったらどーしようかと思ったが、次の【爬車】ではちゃんと現実的な描写で安心した。ほんと、サービス精神旺盛なのね。
Cap1280

現実的だった二度目の【爬車】描写




王強の日本語


 棗庄に帰ってきた劉洪は幼馴染の王強が、日系商社「洋行」で中国人労働者の監督官「二頭」となり、街のみなから「漢奸」と陰でののしられていることを知る。


 で、その「日本人の手先」となった王強が「洋行」の日本人経営者や憲兵隊に媚びているシーンがあるのだが、ここでおもしろいのは王強がつたない日本語、例えば「トモダチ トモダチ」「ゴクロウサマデス」「コンニチワ」などを要所要所で使い、それが日本人経営者の一人・金山の気をよくしている点。

時々、抗日ドラマで描かれる日本兵の日本語がおかしい(例えば「メシメシ」とばかり言っているとか)という日本人の意見をネットで見るけど、ここではそのおかしい日本語を媚日の中国人が使いそれを日本人がおもしろがって喜ぶという構図になっている。

 たぶん、実際そうだったのだろうと思う。占領地の民衆や傀儡軍が、恭順の証として発音も用法も間違っている日本語(しかも「コンニチワ」とか「トモダチ」とか決まりきった日本語)を使うのを少なからぬ日本兵がおもしろがって喜んでいただろう。だから中国人の側も日本兵の気を損ねないためにこのおかしな日本語を繰り返すという構図。

先の抗日ドラマの日本兵は「メシメシ」とばかり言っているという話も(……しかし、私はそんなふうな抗日ドラマ見たことないんだけど)根は同じだろう。簡単で中国人にも言いやすい単語であるから、唱和して日本兵を笑わせ喜ばせていたということが普遍的にあったと思う。なにしろ当時の中国人にとって日本兵の気分を損ねないことは生きるか死ぬかに関わる問題だし。(そういう意味で「兵隊支那語」も同様。日本兵が間違った中国語を使っても誰もあえて正そうとはせず、むしろ積極的に唱和している様子がドラマ中でも描写されている)



今週のフラグ

さて、それでも王強を信じる劉洪は、日本軍の武器を奪取するための協力を依頼。王強は日本軍が武器があるのはどこの車両か教え、劉洪は再び【爬車】で汽車に潜入する。

しかし、その車両にいたのは数名の日本兵と彼らに連行される国民党軍の捕虜たちだった。予想外の事態だったが劉洪はすばやく状況をつかみ、一瞬で日本兵を倒し、ついでに捕まっていた国民党軍の捕虜たちを解放してやる。


国共合作フラグキタッーー!!


 って感じですな。いやいや、ここ数年の抗日ドラマは猫も杓子も国共合作万歳でいやはやって感じです。劉洪と国民党軍捕虜たちは日本軍の追撃でバラバラに逃げていったんお別れしたけど、もちろん後でこの恩義が物語りの絡んでくるんですね、わかります。(劉洪が共産党員だとは1話でまだ明らかになってませんが、まあ、だいたい皆わかっているでしょう)

それにしても時代は変わりました。1956年発売の原作にはもちろんこんなシーンありません。国民党軍は基本的に反共で協力できないどころか有害な存在として書かれています。って言うか、山東の国民党残存部隊は基本そんな感じだったのではないかと思いますけどねぇ。


 さて、日本軍の武器を狙っていた劉洪は思わぬ危険に直面させられてさすがに王強の裏切りを確信。落とし前をつけようとするが、ともかく話を聞いてほしいとの王強の懇願に応じてやるが、そこで王強は「六月の脚の傷は治ったか」と謎の言葉を発し……で次回に続く。

 というわけでいろいろつかみはOK。今後の展開にも十分期待が持てる第一話でした。

 

歴史解説

洋行

 実はあんまりよく知らないんで、間違っている箇所もあるかもしれないけど、『鉄道遊撃隊』前半の重要なキーとなり「洋行」について。

 辞書によれば「洋行」とは、旧時の中国で活動した外国商社のこと。ただ、日中戦争時代の日系「洋行」を現在の外資系商社と同じに考えてはいけないのは、それが日本軍の侵略と多かれ少なかれ関わっているという点(そういう意味でその他列強の「洋行」も似たようなものと言っていいだろう)。そもそもその日系「洋行」の進出は日本軍の中国占領を背景にしているし、また「洋行」の業務自体が日本軍の物資輸送や華北の資源収奪であることもあるし、さらに実は日本軍の特務機関を兼ね備えている場合もある。一応、表向きは「民間」という体裁を採っているが、実態は実際に民間主導である場合から公にも軍が経営を握っていることがはっきりしている場合まである(このへん詳しい話は防衛庁『北支の治安戦』や笠原十九司『日本軍の治安戦』に載っていたような気がするが、今は海外なので確認できない)。なんにしろあくまで「民間」という体裁を採っているため、軍は責任逃れをしやすいため性質が悪い。

 ドラマ中では、ただ「洋行」とのみ呼ばれているが、原作小説および実際の棗庄には「正泰洋行」という名の日系商社が実在し、小説と史実の魯南鉄道大隊初期の活動と深い因縁がある。ドラマおよび小説で「正泰洋行」は地元の中国人労働者を人夫として雇い、主に貨物の運搬をさせている。ドラマではこの後の話であるが、三人の退役軍人日本人が経営し、日本軍の武器輸送も請け負う他、実はこの三人が特務であり棗庄の抗日分子を探し憲兵隊に報告している、という設定である(史実上も「正泰洋行」には三人の日本人経営者がいて、彼らは特務であったという)




以下、いつもの通り腐女子話


 

 上のまとも路線(そうか?)で、国共合作のフラグと書きましたが、それよりももっと重要なフラグが立っているのですよ、お姉さん。

 ちょっと件のシーンをもう少し詳しく見て見ましょう。

 

 王強からの情報で日本軍の武器が積んでいるはずの貨物車両をこじあける劉洪。しかし、そこには武器ではなく数名の日本兵と十数人の軍服の男たち! 劉洪もびっくりだが日本兵たちもびっくり。しかし、劉洪のほうが反応が早く拳銃と投げナイフ(実際にはナイフではなく、大きめのハサミの片割れ)で日本兵を撃破!

 突然始まった両者の交戦に日本兵以外の軍服の男たちは、慌てて貨物車両の隅に退避。事情がわからない劉洪は、そのうちの一人、他の兵士たちより地位が高そうな男に銃を突きつけるが、彼は慌てて「自分たちは捕虜になった国軍の人間だ」と訴え・・・・・・

運命の出会いフラグキタッーーー!!!

 って感じですね。

 『狙撃手』でも書きましたが、私の統計によれば、中国の戦争ドラマ(抗日モノ限定?)には以下のような法則があります。

1.初対面の相手に銃を突きつけられる/突きつけるのは恋のはじまりの合図

2.このお約束は、両者が共産党(八路軍)と国民党(国軍)の場合にのみ発動する

3.銃を突きつけられた側が、最初にかつより深く、銃を突きつけた方に惚れる

 というわけで、『狙撃手』では銃を突きつけられた八路軍の大春が銃を突きつけた国軍の竜紹鉄に惚れることになりました(なってない、という意見は受け付けてません)。『鉄道遊撃隊』では、銃を突きつけられたのは国軍の士官だか将軍ですので、彼が銃を突きつけた劉洪に対し恋に堕ちることになります(ちなみに、『中国兄弟連』というちょっとアレなタイトルの抗日ドラマでは、新四軍の男と国軍の男が出会いがしらに同時に銃を突きつけたったので、なかなか複雑な恋もようとなる)。

Cap1066

参考:『中国兄弟連』より。後に増えましたが最初に銃を突きつけあったのは国共の二人です

 それにしても、この国軍の将軍さんは、けっこうおっさんな年だとは思うのですが、劉洪に銃を突きつけられた時の慌てぶりがなかなか可愛らしくて萌えでした。

Cap1281_2

慌てる反応がなかなか可愛い国軍将軍(?)

 私はおっさん萌えとは縁遠かったのですが、こんな可愛いおっさんなら大歓迎です。国共合作フラグ&運命の出会いフラグに爆笑しながらもトキメキました。



 ちょっとこのおっさん・・・・・・もとい国軍将軍の立場になって考えてみましょう。

 日本軍の捕虜になってしまった!もうおしまいだ・・・・・・と絶望的な気分で恐ろしい日本兵の監視の下、部下たちと縄で繋がれ輸送されていたら、突然列車の戸が破られ颯爽と一人の男が登場! バッタバッタと日本兵を倒し、これで縄を切って逃げるようにナイフ(ハサミ)を差し出してくれたのです。

これは惚れる! 王子様出現!

Cap1282_2

ナイフを差し出して逃げるよう言う劉洪

↑を見ればわかると思いますが(?)、完璧に惚れてしまいましたね。たぶん、この国軍将軍はけっこうな乙男(おとめん)だと思います。・・・・・・って言うか、これじゃマジに劉洪が王子様ポジションだ。

 そして、すぐに他の日本軍が駆けつけてきましたので、互いに名を告げる時間もなく劉洪と国軍捕虜たちはバラバラに逃げます。その際にも国軍将軍は慌しく「謝謝!」と言います。そうとう劉洪に感謝している様子。

 きっとこれから、あの「ハサミの君」はいずこ、君は誰? とばかりに名前も告げあわず別れたことを悔やみつつ再会を願って眠れぬ夜を越していくことでしょう、乙男だから。

 でも、(銃を突きつけた側は当初相手に冷淡という法則は存在するものの)どーもこれはこの国軍将軍の片思いで終わりそうな予感が早くもしますね。たぶん、劉洪は次の日には彼のこと忘れてそうだし。



 それでは、二人の再会を祈って今回はここまで。

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