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2010年11月13日 (土)

中国映画・ドラマで学ぶ中国語(2) それは、食べられません。

 久しぶりの・・・・・・と言うか久しぶりにしかならないこの企画。


 今回は、『井崗山』の朱徳や参謀長の王など紅軍幹部達が会話しているシーンよりこのセリフいってみましょう。

王尓琢”怎么样?(どうする?)  吃掉它

朱徳”你是不是没吃早饭? 饿了”(「君は朝飯を食わなかったのかね? 腹をすかせているんだな」)

 このシーンは別に朝忙しいサラリーマンが朝食を食い逃した場面ではなく、向かってくる敵にどう対処するか話し合っているシーンである。

 しかし、なぜそんな場で朱徳は朝食の話をしているのか? ポイントは王尓琢参謀長の 「吃掉它」という言葉。

  • 吃 chi(1)→食べる
  • 掉 diao(2)→(動詞+掉で)取り除く
  • 吃掉→食べてしまう(=食べ物を食べて取り除く)、敵をやっつける
  • 它 ta(1)→英語の「It」と同じ意味。動物や無生物など具体的な人間個人以外のものを指す。この場合「敵軍」のこと。

 「吃掉」は「 吃」(食べる)という動詞に「 掉」がくっついて、「食べてしまう」という意味になるが、この場合、王参謀長が言わんとしているのはもう一つの意味だろう。

 日本にも「あのむかつくヤロウに一発食らわせてやったぜ」とか言うが(←言うか?)、これはべつに相手の口に食べ物を詰め込んできたわけではなく、殴ってきたことを意味する。それと似たようなもので、この場合、「吃掉」は「敵をやっつける」という意味になる。


 しかし「吃」の用法としては「食べる」の方が圧倒的にメジャーである。そして「吃」だと単に「食べる」という意味だったのが、「吃掉」だと「食べてしまう」という意味になり、前者よりもがつついているイメージが強まる。

 朱徳は王参謀の「吃掉它」の「吃」をわざと「食べる」の意味で受け、その血気盛んな様子を「腹が減ってしかたないんだな、朝飯食べなかったのか」と返した。朱徳のユーモアの一種というわけだ。



 しかし、その後も紅軍幹部たちの会話表現には、食事ネタが続く。

何長工”朱军长,凭我们二十八团的胃口。吃掉它,绰绰有余啊”

  • 朱zhu(1) 军jun(1) 长 chang (2) →朱軍長・・・・・・そのまんま朱徳のことです。
  • 凭ping(2)→寄りかかる、頼る、・・・を根拠に、証拠。
  • 我wo(3)们men(軽声)二er(4)十shi(2)八ba(1)团tuan(2)的de(軽)→私達二十八連隊の
  • 胃wei(4)口kou(3)→食欲、嗜好
  • 凭我们二十八团的胃口→私たち二十八連隊の食欲に頼る→私たち二十八連隊の食欲にまかせる→私たち二十八連隊は充分に食欲がある(=私たち二十八連隊におまかせを)。
  • 吃掉它→それを食べてしまう、敵をやっつける
  • 绰chou(4)绰chou(4)有you(3)余yu(2)→充分余裕がある(成語表現)→(意訳して)朝飯前。
  • 啊a(軽)→語尾表現

というわけで、この中国語は

「朱軍長、我々二十八連隊は充分に食欲があります。それを平らげらるなんて朝飯前ですよ」

「朱軍長、敵は我々二十八連隊におまかせください。あんな奴ら簡単にやっつけられます」

となるが、もちろんドラマ中では後者の意味である。


 さらに、朱徳軍長があえて部隊を退く作戦を出したことに疑問を覚えた幹部が以下のように質問している。

袁崇全”军长,肥肉到嘴边了。不吃啊?”

  • 肥fei(2)肉rou(4)→肉の脂身、うまみのある仕事。
  • 到dao(4)嘴zui(3)边bian(1)了le(軽)→口元に至る→口元まで持ってきた。
  • 不bu(4)吃→食べない。
  • 啊(軽)→軽い疑問を表す

肥肉は(主に豚の)脂身のある肉を指し、中国では上等な肉と言えば「肥肉」を指す。なので

「軍長、せっかくうまい肉を口元にまで持ってきたのに、食べないんですか?」

となるが、だがここでは別に朱徳が脂身肉が嫌いだったわけではなく、

「軍長、せっかく敵を叩けるのになぜ部隊を退かすのですか?」

という意味になるだろう。また場面は違うが井崗山を一時占領した敵がなぜか撤退してしまった時、王佐も敵の行動の意図がつかめず以下のように言っている。

王佐”这到了嘴边的肥肉,他们没啃完就走”(この口元にまで持ってきたうまい肉を食べ終わらないうちに行っちまったのかよ)

こうやって見ると「口元まで持ってきたうまい肉を食べない」とは、「絶好の機会をわざわざ見過ごす」とか「据え膳を食わない」ということを言いたい時の常套句なのかもしれない。




 さて、今までの紅軍幹部の会話を軍事会議の場にふさわしい言葉で訳すと、

王尓琢「どうする? 叩きつぶしてやろう!」

朱徳「君は随分血気に逸っているな。戦いたくてしょうがないとみえる」

何長工「朱軍長、敵は私たち二十八連隊におまかせください。簡単に倒してみせますよ」

(略)

袁崇全「軍長、敵を叩く絶好の機会なのに、退却するのですか?」

 それでは次はセリフの中国語をとても素直に訳してみよう。

王尓琢「どうする? 食い尽くしてやろう!」

朱徳「君は朝食を食べてないのかい。ずいぶん腹をすかしているとみえる」

何長工「朱軍長、私たち二十八連隊も充分食欲がありますよ。あれを平らげるなんて朝飯前です」

(略)

袁崇全「軍長、目の前に脂身肉があるのに食べないんですか?」

 ・・・・・・なんかおもしろい展開になった! とても上の訳と同じ場面のセリフと思えねぇ(笑)


まとめ

 さて、では最後にまじめに文法の整理を。今回重要なのは

・掉→振り回す、ひけらかす、向きを変える、換える、落ちる、遅れる、なくす

・動詞+掉+「O」→動詞の行為によって「O」を取り除く。

例えば、

扔掉→捨ててしまう(捨てて、なくなる)

跑掉了→逃げ切られてしまう(逃げて、いなくなる)

忘掉了→すっかり忘れてしまう(忘れて、記憶から取り除かれる)

というふうに。


またそれをふまえて、「吃掉」には二つの訳し方がある。

・動詞+掉+「O」としての「吃掉」+「O」→「O」を食べきってしまう

・それだけで一つの言葉としての「吃掉」+「O」→「O」をやっつける。


 それじゃ、今回はここまで。

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