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2010年8月23日 (月)

『地道戦』前半

※本作品の紹介では、緑=抗日側、赤=実在人物、青=日本軍,傀儡軍の人物を示します。


あらすじ

 冀中(河北省)平原のとある農村・高平庄。異変を感じた村人たちは、即座に非戦闘員は避難体勢を、民兵は戦闘体勢を整えた。

 その時、会議のために外に出かけていた村長が民兵に担がれ戻ってくる。

Cap102

風に揺れる一面の穂が印象的なシーン

重傷の村長は日本軍の大掃討が始まったことを伝え、一冊の本を渡し、あくまで抵抗を続けることを訴えて息を引き取る。村人たちは村長の思いを継ぎ、戦闘に備える。

 1942年、太平洋戦争の勃発に伴い、戦争のための物資の確保に狂奔する日本軍は、冀中の抗日根拠地に「掃討」と言う名の大規模な物資略奪を行い始めた。――すなわち「五.一大掃討」の始まりである。

 圧倒的に優勢な日本軍の攻撃に、民兵たちも非戦闘員を逃がすのに精一杯で、それでも多くの犠牲者が出た。さらに日本軍は拠点として平原各地に砲楼を建て、根拠地を細かく分断。このような状況では遊撃戦を行うのは不可能に近くなった。

Cap10

村に侵攻する日本軍と逃げ送れた村民

 民兵隊長の高伝宝ら村の民兵たちは状況に苛立ち、とりあえず地雷を埋めて日本兵を吹っ飛ばそうとするが、村の婦女救国会の林霞にその軽率な行動を咎める。高伝宝の父・高忠老は、村長が残した毛沢東の抗戦パンフレットと区長からの指示で、村に元々ある単純な地下道を改良して一つにつなげ、地道戦を行う計画を立てる。

 さっそく総出で地下道の改良を進める若者たち。別々に掘っていたのが一つに繋がった時は大いに喜び、また敵に見つからないよう入り口の隠蔽方法などを工夫する。

Cap897

反対側から掘られていた地道と繋がった

 しかし中には牛娃のようにこのような作業に疑問を持ち、戦闘を希望する者もいた。

 地道が完成すると、婦女救国会の女性たちはその効果を示すため、地道を使って高伝宝をからかい、牛娃も地道の効果を理解する。

 日本軍に協力する偽軍の湯指令は、日本軍の指揮官・山田に高平庄が抵抗を続けていることを告げ、山田は夜を待って村を襲うことにする。

 夜、見回りに出ていた高老忠は日本軍が村に侵入したのを見つけ、鐘を鳴らして村人に危険を知らせ撃たれてしまう。村人たちは急いで地下道に避難する。村に一人の姿もないことに山田は彼らが地下に隠れたと推測し、村中を掘り起こすように命じる。




感想

 この映画は非常に続きが気になるように構成され、見るものをしてワクワクさせる要素がふんだんに投入されている。

 そのおもしろさは文字で書き表してしまうと伝わらない、と言よりも拍子抜けするようなものかもしれない。またその「要素」というのも冷静に見れば、実にベタなものだ。

 だがやはり実際に映画を見ていた時には、非常にワクワクさせられた。言ってしまえば、結局のところ人を楽しませる映画の演出とは、ありきたりでベタなネタにしか帰結しないのかもしれない。それでもそれらをこうも巧妙の配置させるのは一筋縄ではいかないし、それをやってのけたこの監督の手腕はやはり賞賛に値する。


冒頭

 OP映像は、カメラが音楽に合わせて複雑な地道の中を突き進んでいくシーン。中国の人々が作り上げた「地道」そのものの迫力とユニークさに加えて、人の心を掻き立てるような勇ましい中国風革命音楽的なBGMが合わさり、見る者の期待を否が応でも煽る演出となっている。このOPだけで掴みはOKである。

 本編は、いきなり危険を知らせる鐘が鳴り響き、村の民兵たちや婦女慌しく広場に集まる・・・・・・・この場面の緊迫感はただごとではない。まさしく日常生活と戦闘生活が容易に交差し入れ替わる「戦場の村」という感じであり、まさに日常から戦闘へ移り変わる瞬間が描かれている。

Cap1023

危険を知らせる鐘が鳴り響く中、集まる男女民兵たち


秘伝の書?

さて、この後、抗日政権の村々の会議に参加していた村長さんが帰ってくるのだが、帰途(会議中?)日本軍に襲われて虫の息。村人たちに一冊の本を託して息を引き取る・・・・・・。

 日本軍の大掃討と高度分散配置に抗日闘争は行き詰まり、高伝宝ら男性民兵らはネガティブな気持ちに・・・・・・そんな時、村長が残した本のことを思い出す。そこにはこの閉塞的な状況を打開する秘策が!!

 や、これなんて少年冒険活劇もの?

 「秘伝の書」とか「謎の巻物」に書かれていた秘策(情報)で状況打開! いいですね、このノリ。しかも「死者が残した」という設定で倍率ドーンです。

 総合案内で「戦前の少年冒険活劇」のノリと書きましたが、別の例を出すと『宝島』的と言ってもいいかも・・・・・・あの作品に「秘伝の書」的ネタがあったかは思い出せませんが(「宝の地図」はあったけど)、雰囲気的には通ずるものがある。

 で、この「村長の残した本」ってのが、毛沢東の『持久戦論』というオチなのですが(村長は会議でもらったんだな)・・・・・・まあ、そのへんはスルーしましょう。



地道百景1

 私がこの映画に魅かれるのは、映画自体の出来の良さもあるが、抗日闘争の研究でやっぱり「地道戦」という闘争形態そのものにも魅かれているというのがある。

 で、映画で描かれた「地道」を3回に分けて紹介したい。

 「地道」は、まず住民の避難用として有ったため、一番身近でばれにくい場所、すなわち自宅のカマドの中に作られた。

 例えば、↓こうして自宅のカマドの中にもぐると・・・・・・

Cap1027

↓馬(ロバ)小屋に出ます(笑)

Cap899

これは便利(?)だ!

 ↓はおもしろシーン

Cap898

サ×エさん!?

ちなみにこの女の子は主人公の妹なのだが・・・・・・何と言うか・・・・・・なかなかステキな妹属性キャラなのだ。おませで気が強くて、からかったりもするけど(上のシーンもそう)お兄ちゃん大好きっ娘。もちろん超可愛い。60年代の抗日映画にこんなすばらしい妹萌えキャラが存在するとは! 侮れない・・・・・・。




歴史解説

5.1大掃討:1942年5月に日本軍が主に河北省の抗日根拠地に行った大侵攻作戦。それまでたびたび「掃討」は行われていたが、この時のものは開戦後最大規模のものであった。これによって根拠地や八路軍は大きな損害を受けた。

 これを期に、日本軍は波状的な掃討作戦を行い続ける。その過程で、いわゆる三光作戦と呼ばれるにふさわしい住民虐殺などが起こった。そもそもこのような「掃討」作戦は抗日勢力の戦力を削ぐというのが表向きの目的ではあるが、実際には(あるいはもう一つの目的として)住民から農作物などの物資の略奪するためであったとも言える。そのため収穫期などに行われることが多かった。


高度分散配置
:日本軍が大掃討とあわせて採った抗日戦力撲滅のための作戦。広大な華北草原の各所に砲楼(大砲などを設置した拠点)を設置した。

 地域によって基準は異なるが、例えば各砲楼間の距離は10キロ以上あるいは20キロ以上離さないものとし、それぞれの拠点に10人~20人(多くて50人~100人)の人員を配置していた。拠点に配置される人員の構成は、日本軍のみ,日本軍と傀儡軍(偽軍),傀儡軍のみ、などさまざまである。これによって抗日根拠地を細かく分断し、各地域を監視する一方村落間の連絡を遮断し、またすぐに「討伐」に動けるようになった。

 「掃討」作戦と併せてこの高度分散配置は、河北の抗日闘争に著しい損害を与え、1942年より2,3年の間、「最も困難な時期」を迎えることとなった。そのため、しばらくの間正規軍である八路軍の活動は抑え、兵士を柔軟な動きができる民兵や遊撃隊に編制し直し、民兵闘争に力を置いた。

 こうして一旦は成功したかに見えた高度分散配置だが、広大な華北平原の無数の拠点を維持するため膨大な人員を必要とし、太平洋戦争末期まで多くの日本兵が中国に釘付けにされる原因の一つとなった。さらに44年以降、少人数しか配置されていない各拠点は、困難期を乗り越え力をつけた八路軍や民兵のかっこうの標的となり次々攻略されていった。

 

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