2015年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ

ランキング

« 『晩鐘』総合案内 | トップページ | 『晩鐘』中篇 »

2010年8月26日 (木)

『晩鐘』前半

あらすじ

 1945年、日本は無条件降伏。絶望した中国の日本軍のある部隊は全員で焼身自殺を決行する。

Cap876 

集団焼身自殺を前に、一人一人の兵士の名前と出身地を記録し伝書鳩に託す 

一方、八路軍遺体埋葬部隊の5人は、各地を転々とし、地雷撤去も行いながら、仲間の遺体を埋葬して回っていた。

 八路軍兵士の遺体を一人一人手厚く埋葬する5人。一方、カラスに狙われる日本兵たちの遺体をどうするか迷った末、排長はまとめて埋葬してやることにする。しかし中にはその処置に不満な隊員も。

 各地を旅する中で、5人はさまざまな戦争の傷痕を見てやりきれない気持ちになる。隊員の中には日本軍に強姦され自殺した妻を持つ者や、家族全員を殺された者もおり、どうして投降した日本兵を殺すことができないのか、という疑問が渦巻く。

 ある廃寺を今夜の宿にした5人。しかし、その中には一人の衰弱した日本兵が倒れていた。複雑な気持ちで手荒ながらも水を飲ませ、食料を食べさせてやる5人。

 やがて意識が回復したその日本兵は、日本がすでに無条件降伏したことを知らなかった。彼は32人の日本兵が食料が尽きたまま弾薬庫に立てこもってそこを守っている、彼らに食料を与え救ってほしいと5人に頼み込む。

Cap950

部隊の仲間に食料を与えてほしいと懇願する日本兵



感想

しょっぱなから、日本の敗戦のショックで集団焼身自殺を決行する日本兵たち、という衝撃的な場面から始まる。

彼らは「日本兵」として組織の一員として死に赴くのだが、その前に(おそらく集団自殺を提案した上官自身の命令で)一人一人自分の「本名」と「出身地」を述べていく。「組織」の一員として死ぬことを決めた者たちが、その直前に「個人」としての自己を主張する場面だが、しかしそれは「集団自殺」に何も影響を及ぼすことなく、兵士たちは<粛々>と灯油をかぶり炎に焼かれて死んでいく・・・・・・。

 ただ、彼らの「個人」としての名は紙に記され、日本まで届けて欲しいと願われた一羽の伝書鳩に託されたのみ。

Cap877

・・・・・・でもさ、このシーンって衝撃的でいいシーンなんだけど、本編とのエピソードと全然関係ないんだよね。いや、この映画が描こうとしているテーマとは密接に関わりあるけど・・・・・・映画としてこういう手法はどうかな?

 さて、やっと本編。

 本作の主役は、八路軍は八路軍だけど遺体埋葬部隊というちょっと風変わりな任務を負う兵士たち。・・・・・・なるほど、そういう部隊って確かに必要だよね。花形ともいうべき(?)戦闘部隊ではなく、そういう部隊を主役に設定したのもこの映画の特色であり、テーマともあっているのだろう。

 で、この部隊の任務である戦死兵士の埋葬シーンが丁寧に描かれているのだが、同じ場所にあった八路軍兵士と日本軍兵士の遺体の扱いの違いがはっきりと描かれている。

 彼らは、仲間である八路軍兵士たちのために、一人一人の墓を作ってやっている。その遺体の扱いも丁寧で、例えば重くて遺体を引きずってしまっていると、別の隊員がかけつけ遺体の足を持って運ぶのを手伝う。つまり、抗日のために命を落とした兵士の死体を引きずる=粗末に扱う、ことなどあってはいけない、と隊員全員が心から思っているというわけだ。

Cap1029

八路軍兵士の遺体を埋葬する 

そして八路軍兵士の埋葬を終えた後、そばにあった日本軍兵士の遺体をどうするか、というのが問題に。すでに遺体の側には、カラスが集まってきて狙っている。このシーンまでセリフらしいセリフがないが、それでも隊員たちの「日本兵の遺体など放っておけ」という雰囲気と「さすがにこのままではカラスの餌食にさせてしまうのは哀れだ」という感情が交錯しているのが伝わってくる。

 結局、彼らの隊長である排長(小隊長)は、しばしの逡巡の後、彼らも埋葬してやることにする。だが、日本軍兵士のためには大きな穴を一つ掘って、そこへ機械的に投げ込んでいく、という八路軍兵士の遺体に対するのとは対照的な扱いとする。中国を侵略し仲間を殺した相手への憎悪と、遺体となってしまった彼らへの憐憫や人道主義との葛藤の果ての妥協策なのだろう。だが、それでもどうしても埋葬を手伝うのを拒否した兵士もいた。彼の妻は、戦時中に日本兵に強姦され自殺してしまったらしい・・・・・・・。

Cap882

日本軍兵士の遺体を埋葬する

 日本軍に対する憎悪と、人道主義の間で揺らぐ彼らの心情が、やがて日本軍の投降を巡って、緊迫した心理劇を形成する要素の一つとなっていくのである。 



ピックアップ場面

Cap1030

無数の墓に囲まれ、それぞれの思いに浸る5人

小柄な八路軍兵士(どれだけ多くの寡婦が残されたことだろう。これから、俺が結婚する時は、寡婦を娶ろう)

ヒゲの八路軍兵士(俺の妻は、9歳年下だった。今年33歳になるはずだ、まだ子どももいない。帰ったら、きっと子どもを作ろう)

大柄な八路軍兵士(俺の嫁は、井戸に飛び込んだ。日本兵に辱められて。日本兵のくっそったれめ! なぜ、あの捕虜たちを皆殺しにしてはいけないんだ?)

痩せた八路軍兵士[排長を見て](彼の家族は、全員死んだ。この8年、彼は一度も泣くことはなかった)

 各地で戦争の傷跡を見、遠くで泣き喚く寡婦の声を聞きながら、どうしようもない気持ちに浸る5人。

 妻を日本軍に強姦され、自殺で失った男の「なぜ、あの(投降した)捕虜たちを皆殺しにしないのか?」という問いと、排長の「この8年、彼は一度も泣かなかった」という事実が、見る者に迫ってくる。

 なぜ、殺してはいけないのか? なぜ?

 答えを出せないまま、彼らは廃院で一人の日本兵と出会う・・・・・・

« 『晩鐘』総合案内 | トップページ | 『晩鐘』中篇 »

『晩鐘』」カテゴリの記事

オリジナル人物」カテゴリの記事

抗日戦争」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1302395/35966516

この記事へのトラックバック一覧です: 『晩鐘』前半:

« 『晩鐘』総合案内 | トップページ | 『晩鐘』中篇 »