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2010年8月28日 (土)

『晩鐘』中篇

あらすじ

 隠し弾薬庫は、谷間の洞窟の中にあった。捕虜の日本兵は、すでに日本は降伏した,出てきてみんなで日本へ帰ろう、必死に中の隊長に呼びかけるが、かえって入り口をバリケードでふさがれてしまう。八路軍の5人も相手が武装しているためうかつに近づけない。

Cap952

「中隊長!戦争は終わりました!一緒に日本に帰りましょう!!」と叫ぶ捕虜の日本兵

 捕虜の日本兵は声が枯れるまで呼びかけ続け、ついに洞窟の日本軍部隊も降伏に同意する。飢えた彼らに与える食料を用意する八路軍の5人。ためらいながらも、自分たちは決して口にできない卵も入れてやる。

 しかし、洞窟から出てきた日本兵は31人であった。上官の一人に連れられて出てきた兵士たちは八路軍の食料を貪り食う。だが、肉を渡した時、突然上官は吐き出してしまう。

Cap955

八路軍が与えた食料をむさぼり食う日本兵たち

 その時、洞窟の中から一人のボロボロの服をまとった中国人の女が飛び出してくる。5人は女を助けるが、日本兵たちは洞窟に戻ってしまう。隊員の一人は洞窟の中には「32人」しかいないと言って、中国人を無視した捕虜の日本兵に憤りをぶつける。

 日本軍に捕まっていたその女は、日本兵たちが飢餓のあまり一人の中国人を殺して食べたこと、さらにまだ二人の中国人が捕まっていることを伝えて事切れる。隊員の一人は憎悪のあまり洞窟の入り口を機関銃で撃つ。

 5人はこのまま日本軍が投降しなければ洞窟を攻撃することを決め、捕虜の日本兵はすでに声も枯れながら呼びかけ続ける。排長は単身洞窟に向かい、捕らえている二人の中国人を解放するよう迫る。

 日本軍は二人を連れ出すが、どちらも極限まで痩せ細り虫の息になっていた。その無残な姿を見て隊員たちは改めて怒りを募らせる。

Cap960

日本軍は捕らえられていた二人の中国人を解放する



感想

 捕虜の日本兵の必死の説得もあってか、意外とあっさりと(でもないけど)洞窟から出てきて、八路軍の食料を受け取る日本兵たち。

 「隊長殿! 一緒に日本に帰りましょう!」と叫び続ける捕虜の日本兵の姿が痛々しかったが、ともかく一件落着かと思えた。

 上官に連れられて出てきた日本兵たちは、ただひたすら上官の命令に従い続ける。歩けと言われれば歩き、座れと言われて座る。彼らは、飢餓状態が極限に達しているというのに上官の許可がない限り、目の前の食料に誰も手をつけない。徹底的に「個」が消しさられているようである。そしてひとたび許可が出れば、獣のようにむさぼり食う・・・・・・。

 八路軍の5人が与えた食料の中には、彼らが決して口にできないであろう高級品(当時)である卵や肉類もあった。それを日本兵らに与えるのを躊躇した後、結局渡す。しかし、日本兵たちももっとも高価である肉は自分たちが食べず、上官に渡す。

 が、肉を見て吐き出す上官。ここからが、急展開の始まりであった。

 突然、洞窟の中からボロボロの服をまとった女が叫びながら飛び出してきて、日本兵たちは再び洞窟の中に逃げ帰ってしまう。

 服装がボロボロだったことから、最初、洞窟の日本兵たちに性暴力を受けていたのかと思ったが・・・・・・洞窟の日本兵たちは飢餓の余り捕らえた中国人を食べていたのだという衝撃的な事実が明らかになる。

 この事実の暴露、そして再びの洞窟立て篭もりで、この後、映画は見る者につばを飲み込むことも許さないような異様な緊張感に包まれていく。

Cap953

 洞窟の暗黒の中に潜む日本兵たち

 日本の降伏を是とせず、頑なに立て篭もり続ける日本兵たち。もしかしたらそれは、天皇や国家への忠誠や信念を貫徹する行為として賞賛される可能性もあったかもしれない。しかし、彼らはそのために捉えた中国人を食べていた。何の関係もない他者を踏み台にしていたのである。

 聖戦と言い、天皇や国家への忠誠と言う。そんな一歩間違えば「美学」として語られかねない日本軍の戦いが、中国をそして無数の踏みにじられた他者の上に成り立っていることをこの映画は明らかにする。

「一緒に日本へ帰りましょう!」という被害者としての一兵士の血の叫びと、「(洞窟にいるのは)32人だと? 中国人は人じゃないのか!」と加害者として糾弾される声が交差する映画なのである。

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