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2010年8月24日 (火)

『晩鐘』総合案内

Cap874

放映:1989年

製作:八一電影

監督:呉子牛

シナリオ:呉子牛,王一飛

出演:陶澤如(八路軍排長),孫敏(捕虜の日本兵),劉若鐳(ヒゲの八路軍兵士),葛亜明(大柄な八路軍兵士),葉楠秋(小柄な八路軍兵士),周琦(痩せた八路軍兵士)

※排長→中国語で小隊長のこと

受賞歴:第9回金鶏賞(最優秀監督賞,最優秀主演男優賞,最優秀助演男優賞,最優秀撮影賞)受賞,第39回ベルリン国際映画祭銀熊賞、他

※金鶏賞:中国で最も権威ある映画賞

評価:(5段階評価、最高5つ星)

ストーリー:★★★       人物造詣:★★★★

文学度:★★★★★      エンタメ度:

萌え度:            総合お勧め度:★★★★★

入手可能ショップ:現代中国映画上映会

※入手は難しいと思われるが、日本語版が出ているらしい→http://movie.goo.ne.jp/movies/p16102/index.html


簡単あらすじ
:抗日戦争終了直後、戦闘で死亡した仲間の遺体を埋葬するため各地を転々とする八路軍の遺体埋葬部隊。彼らはある廃院で一人の衰弱した日本兵を発見する。その日本兵は近くの洞窟に仲間の日本兵32人が投降を拒否して立て篭もり食料も尽きている、彼らに食料を与えて欲しいと訴える。しかし、八路軍が案内された洞窟では恐るべき事態が起きており、徐々に狂気に侵食されていく・・・・・・


簡単解説
:抗日戦争終了後、武器庫を守るため投降を拒否する日本軍部隊と投降を呼びかける八路軍の遺体埋葬部隊との極限でのやり取りを描く。

第五世代の監督である呉子牛の5作目。その傑作ぶりから中国の最も権威ある賞・金鶏賞を総なめし、ベルリン国際映画祭りでは中国作品として始めて「銀熊賞(審査員特別賞)」を勝ち取った。

 派手なストーリー、個性的なキャラクターもないが、圧倒的な迫力と映画の底力を見せ付けるようなすばらしい作品である。

 全体的に見る者に著しい緊張感を強いる映画である(注:褒めている)。特に開始50分~1時間後のいったん問題が解決したかと思われた直後の急展開からラストにいたる緊迫感がほとんど異常なレベルだ。

 この映画は「静寂」と「闇」に満ちており、その中で狂気が醸成されていく。水の音,わずかなみじろぎ,虫の羽音・・・・・・見る者はまるで闇夜の中を行く小動物になったかのようにわずかな音や(映画の中の)気配にいつの間にか神経過敏にさせられ、怯えさせられてしまう。

 思うのだが、こういう映画は日本人こそが作るべきであった、と思う。この映画の主題は「(一般的な)戦争の狂気」という<普遍的>なものであることは間違いないが、同時に「日本軍」という<固有の組織>が持つ愚昧さもきちんと描かれている。それはことさらに日本軍を悪く描こうというわけではなく(←私自身はべつにそのことに意義はないが)、中国人の記憶にある日本軍や歴史家などが史料や証言に基づいて検証した日本軍という組織・・・・・・つまり史実に沿って造詣したらこうなった、ということであろう。また同作品では一歩踏み込んで、その愚昧さの理由の一つを「天皇の軍隊」という側面に求めているように見える場面もあるが、その点はやや掘り下げが甘いのが残念だ。(私としては、明確に<日本軍>についてしかも史実に即して描かれている時に、その問題や犯罪行為を、その他の国々の人ならいいが、<日本人>自身が「戦争(一般の)狂気」「軍隊の業」とか捉えてしまうことは、厳に慎むべきことだと考える)

 また映画では、そのような愚昧な組織に取り込まれた一般の日本兵たちの被害者性と加害者性がくるくると交代しながら描きだされる。特に集団自決を迫られた彼らが闇夜の中で「荒城の月」を歌う場面は、この作品の名場面の一つである。

 そして映画ではその日本軍の思想と美学(天皇への忠誠や生きて捕虜の辱めを受けずなど)が他者をまきこんでいかなるおぞましき事態を引き起こしたかを象徴的に明らかにする。・・・・・・やはりこのような映画は日本人自身が作るべきだったのであり、それが日本人によってなされず中国人によってなされたことに、戦後日本の問題がある。

 一方で、この映画には冒頭やラストに衝撃的だがストーリーとまったく関係ない意味不明なシーンもあり、ラストの結末も見る者の想像力に期待しすぎな面があり、そこが作品として大きな欠点だと思う。

 

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